logo After THE BARN #4 - From SCRATCH to Silverboy



SCRATCHより親愛なるSilverboyへ 元気にしているかい?

返事が遅れてしまってすまない。ずっと気にかけてはいたんだけど、周囲が少しばかり慌ただしくてゆっくり考えをまとめることができなかったんだ。
君自身は自覚しているかどうか判らないけど、君が今回僕に提示してきた疑問はとても大きなテーマだと思う。少なくとも僕にとっては半端な姿勢で答えられるものではなかった。このメールに先駆けてわざわざ論点を確認するようなメールを送らせてもらったのもそういう気持ちからだったんだ。

正直なところ僕は今でも多少戸惑っている。いきなり大きなケーキを丸ごと目の前におかれた子供のように、どこからかぶりついたらいいのか迷っているんだ。だが幸いなことに君は、最初の手がかりとして僕に「Rock & Roll Night」というキーワードをくれた。まずはそれを頼りに、僕なりの考えを書いていこうと思っている。

初日に横須賀でこの曲のイントロが流れだした時、僕の頭の中はまっぷたつに割れて全く逆のことを考えていた。片側では大好きなこの曲がこのツアーでも演奏されるのだということを素直に喜んでいたんだけど、もう片側では「なんでこの曲がここに来るんだ?」という非常に率直な疑問を抱いていたんだ。
「THE BARN」発表後の一連のプロモ−ションにおける佐野の発言から、このツアーのステージ構成の中枢に「ロックンロール・ハート」が据えられることはまず確実だったし、実際そうなっていたことはツアーレポートを参照してもらえば解ると思う。そしてそれは、この曲がHKBにとっての新しい「Rock & Roll Night」ともいえる存在になるということを意味しているのではないかと僕は考えていた。そんな中で「約束の橋」わずか1曲を挟んで「ロックンロール・ハート」と「Rock & Roll Night」が肩を並べるようにして演奏されるということが佐野にとって、そしてバンドにとってどういう意味を持っているのか、その時の僕にはすぐには理解できなかったんだ。

だが、この謎を解くことなしに今回のツアーの全貌はみえてこないのではないか、ライブの核心はこの部分にこそ隠されているんじゃないかということも、僕は同時に強く感じていた。2日めの相模大野でも必死に考えてみたが答えは出なかった。そして3日め、大雪による交通機関のマヒをおして出かけた市川で納得のいく答えに到達できなかった時、僕は答えを急ぐことをやめた。ここに本当に核心となるものが隠されているのなら、それは絶対に見えてくる。観続けてさえいれば、目の前がパッと開けたようになる瞬間がいつか必ずやってくるはずだ、僕はそう思ったんだ。

そして僕が思った通り、その瞬間はある日突然にやってきた。しかも僕自身全く予想もしていなかった方角からね。

君から切符を譲り受けて京都会館のライブに行くことになった僕は、前々からこのライブに行くと言っていた京都在住の旧友に急遽連絡をとった。そしてライブが終わったあと現地で再会、彼と彼の夫人の3人で一献かたむけながらその日のライブについて語り合っていたのだが、話が「ロックンロール・ハート」から「Rock & Roll Night」へ続く一連の曲構成へと差し掛かった時、この構成は疑問だと言った僕に対して旧友は事もなげにあっさりとこう言ったんだ。
「そんなん、解り過ぎるくらいよー解るやんか。これほど解り易い構成はあらへんで。」

旧友は更に続けた。
「『ロックンロール・ハート』で"この気持ちだけは変わらない"ってゆうやろ。変わらない気持ちのもともとは『Rock & Roll Night』やんか。"僕の気持ちはずっと変わらないんだぞ"って言って、"僕は間違ってないよね"って『約束の橋』で言って、そいで"おおもとはここにあるんだぞ"って『Rock & Roll Night』が続くンやないか。」
僕は目から鱗が音をたてて落ちていくような気がして、思わず旧友と握手してしまった。

彼が言う通りなんだ。このツアーの曲構成は確かに「ロックンロール・ハート」が軸となっているし、これが今の佐野のスピリットを最もよく表している曲であることは誰がみても明らかだ。しかし、それがもともとどこから来ているのかと遡っていったら、それは必ず「Rock & Roll Night」にたどり着くはずなんだ。"この気持ちだけは変わらない"というフレーズはここから端を発するのであり、変わっていないことを示すために「Rock & Roll Night」はここで唄われなくてはならなかった。そして間に入った「約束の橋」は"間違いじゃない"というフレーズでこの2曲を強力に結びつける役割を果たしているんだ。

僕はそれまで、この2曲を並列にならべて今回のステージ構成を考えていた。並列にならべた場合、この2曲は同じような内容を示唆しているために、構成上同じ役割を担うものと考えてしまいがちになり、ともすれば「なんで両方必要なんだ、片方で充分じゃないか」ということになる。
だけどそうじゃないんだよSilverboy。この2曲は「約束の橋」を連結器にして直列につながっていたんだ。ここに本当に核心となるものがあるからこそ、佐野はライブのハイライトの時間帯に、この2曲を直列つなぎにしてにもってきたんだと僕は思う。小学校で教わる通り、乾電池は直列につなげば倍のパワーが出るわけだからね。

そしてその「核心」とは何なのか。うまくいえないけれど、それこそが君の言葉でいうところの「受け継がれたもの」であり「表現の初期衝動」にあたるものなんじゃないのかな、と僕は思っているんだ。
どうだろうSilverboy、ここまでの僕の解釈は見当はずれだと思うかい?
是非君の考えを聞かせて欲しい。

最後にひとつ。おととし行われた「FRUITS TOUR」−今更言うまでもなく、HKBが初めて6人だけで全国を廻った記念すべきツアーだ−このツアーでもやはり「Rock & Roll Night」は演奏されていた。初日の戸田市文化会館でこの曲を演奏する直前、佐野が客席に向かって放った言葉が僕のノートの片隅に残っていたので、参考までにここに紹介しておこうと思う。
「僕は今度のツアーでこの曲をやろうかやるまいか、とても迷ったんですけど、僕の中でとても大切な曲であるように感じられたので、やっぱり演奏することにしました。」

それじゃ。また今度。

SCRATCH



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