logo After THE BARN #7 - From SCRATCH to Silverboy



SCRATCHより親愛なるSilverboyへ 昨日の続きだ。

昨日のメールでは"クラシックス"5曲のうち「君を探している(朝が来るまで)」「ガラスのジェネレーション」「DOWN TOWN BOY」について書かせてもらった。次は「SOMEDAY」の話だ。この曲は2/10に神戸で一度演奏されたのち、3/14、佐野の誕生日の翌日の名古屋公演で再び演奏され、そののちほぼ毎回演奏されることになる。だから登場順からいえば2番目ということになるが、ローテーション入りしてくるのは名古屋以降のことなので僕は4番目という解釈をしているんだ。

この曲のことを考える前にひとつ、してほしいことがある。それは「頭を初期化する」こと。「SOMEDAY」という曲は佐野元春というアーティストの数多あるナンバーの中でも、固有のこだわりや思い入れを非常に持ちやすい曲だ。実際僕もそうだし、メールを読む限り君の中にもそういう部分は少なからずあるように思う。でもそれはいちど全部捨ててほしい。個人的な思い入れを盾にこの曲の是非を論ずるのは、僕には決していいやり方とは思えないんだ。「SOMEDAY」は初期の佐野元春を代表するナンバーであり、世間的な知名度も最も高く、多くのファンは個々に強い思い入れをもってこの曲を「とても大切な曲」と感じている。初期化した頭にこの基本情報だけをインプットして、その上でTHE BARN TOURにおけるこの曲の意義について考えてみたい。

まず、2/10の神戸で演奏された「SOMEDAY」の意義については今更述べるまでもないと思う。震災以来、佐野が阪神の地で行うライブに常に最大限の配慮をし続けていることは紛れもない事実であり、実際昨年の夏に大阪のFM放送のイベントに参加した時も、限られた曲数の中でわざわざこの曲をラストに、しかも矢野顕子とのデュエットによって披露するという趣向を"スペシャルプレゼント"として用意していた。阪神の地における「SOMEDAY」は、ただの"クラシックス"ではない。そのことについてはおそらく、君も異論はないはずだ。

ただ、このことから導き出せる推論がひとつある。それは、佐野元春自身が何のかんのいっても実は「SOMEDAY」を特別視しているのではないか、ということだ。いくら震災の地に捧げる応援歌とはいえ「THE BARN」サウンドオンリーの傾向著しいこのツアーに挿入することが可能な曲はこれ以外にもあったはずなんだ。しかし佐野は数多いナンバーの中から選んでこの曲をもってきた。この事実からみて"「SOMEDAY」は特別"という意識はファンだけでなく佐野自身の中にもあり、この曲に他の曲とは違う魔法の力があるということは、彼自身の中で十分に意識されている事柄なんじゃないか、僕はそんな風に解釈している。

以上のことを念頭に置きながら話を進めよう。次に「SOMEDAY」が演奏されるのは名古屋3DAYSの中日、3/14のことだ。この日、この曲がライブで演奏されたことの意義についてはライブレポートでも触れたし、君もその点は同意してくれていると思う。問題はその後の日程における「SOMEDAY」の処遇だ。

3/15以降の日程には、僕が参加していないライブが2つある。15日の名古屋と27日の大阪。ゆえにこの2公演については伝聞を基に検証するしかない訳だが、公式サイトの投稿ライブレポートなどからすると、15日の名古屋最終日にはどうやら「SOMEDAY」は演奏されていないようだ(もしどこからか違うという情報を得ていたら遠慮なく訂正してほしい)。だから3/15以降の日程で「SOMEDAY」が演奏されているのは3/23,24の渋谷、3/27,28,29の大阪、4/11の渋谷、4/14の横浜の7公演ということになる。

このうち3/27,28,29の大阪における「SOMEDAY」演奏の意図は君にも何となく察せられるんじゃないだろうか。神戸ほど傷跡が深刻ではないにしろ、大阪も震災でかなりの被害をこうむった地域だ。神戸に払ったのと同様の気配りを佐野が大阪のライブでみせるのは、ある意味当然のことだろうという気がする。

それに加え、28,29の2日間は「THE BARN」の制作に深く関わったジョン・サイモン、ガース・ハドソンの両巨匠が会場に姿を見せていた。佐野が彼らに「THE BARN」サウンドとはまた違うアナザーサイドの代表作として「SOMEDAY」を聴かせてみたい、会場中が歌声とぴったり揃った手拍子(君はこれが嫌いなようだけどね)で満ちる様を見せたいと思ったとしても、それはもっともな話なんじゃないか、僕はそう思うんだ。

さて、残りの日程−3/23,24の渋谷、4/11の渋谷、4/14の横浜についてだが…
君も知っているとおり、渋谷と横浜という土地は今回のツアーにおいて特別中の特別ともいえる地域だ。2/4,5の両日にこの地で行われるはずだったライブが、佐野元春本人の病気(インフルエンザ)によって2か月も延期になってしまったことは、今更確認するまでもない事柄だよね。生まれて初めて「ライブを延期させた」という事実は、どうやら佐野に周りが想像するより遥かに強い衝撃を与えたらしい。復帰後のライブの中でも「こんなことは初めて」「小・中学校はずっと無遅刻・無欠席だったのに」と何度も悔しがり、ライブ延期をすごく気にしている様子は客席からも非常によく感じ取ることができた。

その"特別中の特別地域"で初めて行われたライブが3/23,24の渋谷2DAYS。この2日間、佐野が盛んに口にしていた言葉がある。「2倍返し」自分自身の不徳でみんなを待たせてしまった、その代償としてきょうは2月の分まで2倍演奏するよ、という訳だ。実際この2日間とも、ライブの終了時刻は22時近く。最後には「もう僕は時間が何時かなんて知らない」なんて発言も飛び出すほど、佐野自身はこのライブに入れ込んでいたんだ。そんな情況を考えれば、このステージで「SOMEDAY」が演奏されなかったという方が逆に不自然であるように僕には思える。そして、正規の日程だった3月の公演でさえこの入れ込みようだった佐野が、4月の振替公演にどれほどの精力を注ごうとするかは、それこそ推して知るべしだと思わないか?Silverboy、君はどう思う?

そして最後に「スターダスト・キッズ」。この曲が演奏されたのは4/11渋谷、4/14横浜の2公演。つまり、"振替公演のみ限定のスペシャルメニュー"だった訳だ。

振替公演のみ限定のスペシャルメニュー"の是非については、今更論ずるまでもないと思う。前の「SOMEDAY」の項でも書いた通り、佐野はこの公演延期を殊の外気にして大変な入れ込みを見せていた訳だから、2か月待ってくれたオーディエンスにスペシャルなプレゼントを、と考えてもそれは無理からぬ話だ。問題はなぜそれがよりによって「スターダスト・キッズ」でなければならなかったか、ということ。僕は単純に順を追って考えて「次に"クラシックス"をやるなら"スターダスト・キッズ"」みたいに考えていたからあまり疑問を感じなかったんだけど、当然そんなことじゃ君は納得しないよね。

これについては、実は僕も確信を持った答えは未だに出ていない。だが、公式サイトのニュースレターを読み直してみると、4/11の渋谷のリハーサル前の楽屋で、佐橋佳幸が佐野の弾き語り曲の候補をチェックしているというくだりがでてくる。その様子とHKBメンバーの多忙さから推測して、"スペシャルメニュー"の演目はその時決められたと考えていいと思うんだ。本番開始のわずか数時間前に決めた訳だから、いくらもともとは自分が作ったナンバーとはいえ、佐野が間違いなく自信をもって弾き語りでスペシャルなプレゼントにできる曲となればやはり自ずと限られてくるんじゃないだろうか。そういう観点で選ばれたのが「ジュジュ」とこの曲だったということで、もしかするとそれ以上の深い意味はこの選曲には込められていないのかも知れない。

ただ、ひとつだけ気になることがある。上述のニュースレターの描写では、佐橋がチェックしている脇で佐野はもう既に「スター…」を口ずさんでいるんだ。その様子からみて佐野は、何らかの意図をもってこの曲だけは前々から演ることを心に決めていたという可能性も無いとはいえない。事の真相は佐野自身に訊いてみないと何ともいえないところだけどね。

以上、"クラシックス"5曲について僕なりの考えを述べさせてもらった訳だけれど、僕はこれで君がすっかり納得してくれるとは全然思っちゃいない。何故なら、僕は君が提示した最も大きな疑問にまだ答えていないから。それについては次のメールで述べたいと思う。このまま続けてもいいけど、あんまり遅くまで起きていると君を心配させるからね。

またメールするよ。それじゃ。

SCRATCH



[ backward | forward ]



THE BARN SPECIAL

AFTER THE BARN



welcomewhat's newmotoharu sanomy profilemy opiniondisc reviewtravelmail to methank youlink


Copyright Reserved
1998 SCRATCH, Silverboy
e-Mail address : silverboy@t-online.de