logo ロンドン(その1)




ロンドンは僕がかつて始めて訪れた海外の街である。大学の卒業旅行と称して友達と二人、ビクトリア駅の裏のB&Bに泊まって10日間レコード屋に通いつめた。帰りのカバンには30枚近いCDが入っていた。マーキーや100クラブで得体の知れないバンドのライブも見たし、ゴシップスというクラブを訪ね当てて、ギャズ・メイオールの主宰するギャズ・ロッキン・ブルースも経験した。89年の冬のことだ。

それからロンドンには4回行った。タウン&カントリーでライドのライブを見たこともあれば、仕事で2泊し、帰りの飛行機の時間がぎりぎりになってヒースローの駅を走ったこともあった。ロンドンは僕には今でも特別な街だ。

通算6回目のロンドン。今回の主な目的はショッピング、ふだん子供連れではなかなかままならない買い物を、この際身軽にすませておこうという一人旅である。1月3日、昼のBAでデュッセルドルフを出発する。昼飯は機内食ですませようというつもりで、出たものはコーヒー・フレッシュ以外一つ残らずたいらげた。僕にしては珍しいことだ。チキンのガーリック風味ソテー、コールド・ミールだが悪くない。食後の紅茶が美味い。さすがBAである。

しかしロンドンは天気が悪いらしく、近づくにつれて揺れが激しくなる。特に風が強いようで、下降を始めると何度も身体が宙に浮くあの嫌な感じになる。最近揺れが激しいだけで死者が出ることもあるということが実証されているのであまりいい気持ちはしない。こんなに揺れたのは一番最初のロンドンからの帰り、乗り継ぎの大韓航空ソウル−伊丹便以来である。

ともかくぐらぐら揺れながらも無事ヒースロー空港に着陸。さすがメジャー・キャリアは違う。こういうときBAとかルフトハンザとかJALとかは信頼感がある。悪いけどマイナーや米系とは気持ちの落ちつきが違う(米系は乗ったことないけど)。降りてみるとやはり天気悪し。風が強く時折激しく雨が降ったり急に照ったり、動きの速い嵐である。

入国検査。EUのパスポートを持っているヤツらはさっさとフリーで入国して行く。日本国籍を最も恨むのはこのときである。やむを得ない。列に並びながらカードを書いて、検査官の質問に答える。滞在日数と目的を訊かれる。2日間、観光と買い物と答える。ツアーのジジババには「斉藤寝具」と答えるようにと教えるんだって。本当かよ。

空港からは地下鉄である。ちょうど土曜日なので、ウィークエンド・トラベルカードを買う。6ポンドである。普通にキップを買うと、空港から市内まで3.20ポンド、往復するだけで元がとれて、その上土日地下鉄、市バスが乗り放題である。窓口は列ができているが並んで買った。タクシーは高いし時として渋滞に巻き込まれる。荷物が多いときなど地下鉄は大変だが、安いし時間が読めるのがありがたい。読めるのはありがたいが、いかんせんヒースローは遠い。市内中心まで40分から50分かかる。

僕はナイツブリッジ(Knightsbridge)で降りた。いわずと知れたハロッズを目指す。バーゲン・シーズンでこの界隈はえらい人出である。雨は降っていない。ハロッズは駅から3分だが中で迷う。インフォメーションを探し館内案内のパンフレット(日本語)をもらってやっと分かった。4階おもちゃ売場でロンドン・バスとロンドン・タクシーのミニカーを買う。ハロッズのノベルティ・グッズもちょっと欲しかったが、予定になかったし最初から長居すると後がつかえるので出た。

ハイド・パーク・コーナー(Hyde Park Corner)まで歩く。一駅だ。ロンドンの歩行者はクルマが来ていないと信号を守らない。でもそれにくっついて行ってはねられてもだれも責任はとってくれない。だから勝手の分からない交差点ではいくら車が止まっていても信号を守る。クルマが明らかに来ていないときは赤でも渡る。自分で判断するしかないのだ。

ハイド・パーク・コーナーでハード・ロック・カフェ(HRC)を探した。最近HRCに凝っていて、これのあるところでは必ずTシャツとキャップを買うことにしている。このあいだ一時帰国したときはバカらしい気もしたが大阪のHRCでも買った。ヨーロッパではマドリッド、アントワープを押さえてこの間パリで探したが見つからなかった(パリは6年ほど前に一度行ってキャップを買っている)。ホノルルは4年前新婚旅行で行った。ロンドンは最初に来たとき、案内してくれたイギリス人(ケネス・グランジというインダストリアル・デザイナー、結構有名らしいけど知ってる?)が連れていってくれたのだが、グッズは買わなかったのだ。

HRCは簡単に探し当てたが、行列ができている。焦ったがそれはレストランの方に入る行列で、ノベルティ・グッズのショップはすいていた。よかった、ここの食べ物には興味ない。しかし僕の前で買っているイタリア人らしき男4人連れの買い物がなかなか終わらない。待っているうちにみぞれ混じりの雨が降りだしだんだん強くなってくる。おまえらええ加減にせえよと関西弁で言いたくなるがこういうときはじっと待つのがヨーロッパの流儀である(そのかわり自分の順番の時は後ろを気にしない)。今度戦争するときはイタリアは仲間に入れないことにしよう。キャップのサイズは買ってから合わせろっつーの。

やっと順番がまわってくる。Tシャツとキャップを買った。キャップは他では見たことのないデニムとタンの浅めのヤツ。後ろに「LONDON」と入っている。売り子のお姉ちゃんも先ほどのイタリア人とはうって変わった僕のてきぱきとした買い物に、さすがは日本人、今度の戦争では一緒にイタリアをやっつけましょうとでも言いたげな笑みを返してくれる(気のせいかもしれない)。

ここからピカデリー・サーカス(Piccadilly Circus)までは高血圧対策を兼ねてさらに歩く予定だったが、雨が厳しく地下鉄に乗ることにした。二駅。地下鉄のホームで買った商品をリュックに入れ、びしょびしょになったHRCの紙袋を捨てた。ピカデリーではまずすぐ正面のタワー・レコードへ。ここでブラック・グレープとストレンジラブの新譜を買う。ストレンジラブの新譜が出ていたなんて知らなかったがクレジットは97年。他にもいろいろ物色したが、これはというものはなく店を出る。まあ今回はCDはそれほど力が入っていない。

少し歩いてフォートナム&メイソン。日本人密度が高い。みんな紅茶を漁っている。僕も漁る。パリのフォーションで買ったアールグレイはいまいち薄かったような気がして、やはりここのが飲みたいと思ったのがそもそも今回のロンドン行きの動機の一つでもある。特製缶のアールグレイと通常缶のアールグレイ・クラシック(どう違うんだろう?)、アッサムとダージリンとブレックファストの3缶詰め合わせを買おうとしてレジに行ったら、カウンターの後ろに袋入りの紅茶があり、アールグレイ・クラシックは缶をやめて袋にしてもらった。

長くなったので次のページに続く




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