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TIME OUT!

1990.11.9発売
Epic Sony / ESCB-1111

PRODUCER :
佐野元春・Colin Fairley(ex. M-3)、
吉野金次(M-3)
ENGINEER :
阿部保弘、安部 徹

作詞・作曲 :
佐野元春
●ぼくは大人になった A Big Boy Now
●クエスチョンズ Questions
●君を待っている Waiting For You
●ジャスミンガール Jasmine Girl
●サニーデイ One Sunny Day
●夏の地球 Love Planets
●ビッグタイム Big Time
●彼女が自由に踊るとき
 When She Danced
●恋する男 A Man In Love
●ガンボ Happy Gumbo
●空よりも高く Home

7枚目のオリジナル・アルバム。先行発売シングル「ジャスミンガール」の両面を収録、また「ぼくは大人になった」がシングルカットされた。

前作と同じくコリン・フェアリーをプロデューサーに迎えて制作されたが、レコーディングは東京で行われ、ハートランドがバッキングをつとめている。アーティストクレジットは佐野元春 with The Heartland。

このアルバムは「ぼくは大人になった」と題された曲で始まる。このタイトルは当然「つまらない大人にはなりたくない」と歌った「ガラスのジェネレーション」に答えたものだが、この曲では自身がどのように「大人になった」のかが語られる訳ではない。曲の終わりで、むしろ自分に言い聞かせるように「ため息をつくのはもうやめよう」と歌われるだけで、あとはどこか寂しげな口笛に引き継がれて行く。このタイトルからは、(佐野元春自身の、そしてまたリスナーの)ティーンエイジフッドとの約束であった「つまらない大人にはなりたくない」というフレーズがいつの間にか佐野の手足を縛る重荷になっていたこと、そしてこの時期の佐野がそれを懸命に超克しようとしていたことがうかがえるが、それは後に「The Circle」で「探していた自由」も「本当の真実」も「もうない」と言い切った認識とは決定的に異なっており、ここでは再生への願いが逆に佐野の置かれた情況の困難さを際だたせる皮肉な結果となっている。

このアルバムは前作のアグレッシブさに比べると極めて内向的、内省的な内容となっており、個人的な事情もあって、「ホーム」に回帰しようとする佐野の心情を強く反映している。「クエスチョンズ」では「誰かここに来て救い出してほしい」と歌われるし、曲調は全体にマイナーで、意図のはっきりしない表現も少なくない。パーティーソングの作りになっている「ガンボ」にも、かつての「ハッピーマン」のようなスピード感、突き抜けた明るさはなく、果てしなくこんがらがって行くような混乱だけが印象に残る。そしてこの曲のフェイドアウト間際では「誰かここに来て救い出してほしい」というフレーズが再び現れ、佐野自身がこうした混乱に巻き込まれていることを示唆している。

レコーディングは、デジタルレコーディングが音の感触を画一化して行くことへの危惧、反発からアナログ機材を使って行われた。スタジオの若いエンジニアがビートルズの「リボルバー」を聴いているのに触発され、レコードからまるで目の前で歌っているような音が立ち上がってくる音の感触を作ってみたかったのだと佐野は語っている。その試みはかなりの程度成功していると言え、セパレーションのはっきりした前作のサウンドプロダクションに比べると、バンド的な音のまとまり、響きに重点を置いた仕上がりになっている。

かつて「街に出ようぜ」と宣言した佐野が本作では「家に帰ろう」と歌わざるを得なかったこと。このアルバムのそうした内向性、回帰性は、しかし先に述べたようなサウンドプロダクションとも相まって、初期のソングライティングに通じるいくつかのフレンドリーなポップソングを生んだことも指摘しておかなければならない。ただいずれにせよ本作は当時の佐野の内面の混乱をかなり率直に表明したアルバムであり、結果的にそうしたいくつかの秀作を含んではいるものの、全体としては痛々しささえ漂う困難な作品であることは否定し難い。

個人的には「ジャスミンガール」「君を待っている」「ビッグタイム」「彼女が自由に踊るとき」「恋する男」が好きな曲で、それ以外はあまり積極的に聴く気にはなれないというのが正直なところ。「君を待っている」は本作以前のツアーで披露されていたハートランドのフルバッキングで聴きたかったが、佐野のピアノ弾き語りもまたよしといったところだろうか。「彼女が自由に踊るとき」は先に述べた「リボルバー」へのオマージュか、アレンジにやや中期ビートルズ的なサイケデリック・フレイバーが感じられる。

本作のテーマでもあり、その後もライブで取り上げられることになる「空よりも高く」という曲は、僕には長いだけでまるで響いて来なかった。



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