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グラン・カナリア(Gran Canaria, Spain) 98年7月5日(日)〜12日(日)


カナリア諸島にて

カナリア諸島はモロッコ、西サハラの沖合いに浮かぶスペイン領の島々である。年間を通じて日中の平均気温が20度を下回ることのない常夏の島で、ヨーロッパから手頃な距離にあるリゾートとして多くの観光客が訪れる。

中心は諸島の中でも最も大きなテネリフェ島と今回1週間を過ごしたグラン・カナリア島である。火山活動によって形成された溶岩性の土壌らしく、空港から見渡した景色は一面茶色でいかにも荒れてやせた土地であった。降雨も少ないので自生している植物は少なかろうと思わせる。1週間の滞在中雨は一滴も降らなかった。

今回僕がグラン・カナリアで休暇を過ごそうと思い立ったのは、言うまでもなく大滝詠一の「カナリア諸島にて」の影響である。陽光の降り注ぐビーチ・リゾートというだけなら他にも行くところはいくらもあったが、マジョルカでもなく、イビザでもなく、コスタ・デル・ソルでもポルトガルでもなく、飛行機で4時間かけてでもカナリアだったのは、あの「A LONG VACATION」で歌われたその島がどんなところか、この目で確かめたいという思いからであった。

まあ、行ってみればどうということのないリゾートではあったが、ともかくあの曲を初めて聴いた高校生の時、それがどこにあるかも知らず、ましてや自分がそんなところを訪れることになるとは思いも寄らなかった空想上の場所で、32歳の夏休みを過ごせたのは妙に感慨深かった。


マスパロマス

僕が泊まったのは、グラン・カナリア島の南端にあるマスパロマス(Maspalomas)という街だったのだが、ここは最近新たにリゾート開発されたとおぼしき地域で、完全に区画整理された荒れ地に、真新しいリゾート・ホテルやバンガローやゴルフ場だけが連なる、極めて生活臭のないところである。

このホテル群を抜けて南の岬に出ると灯台がある。この灯台は海に向けて広がるマスパロマス砂漠の西の端にあたり、砂漠が海と接するところは海水浴場になっている。灯台の周辺には小さなオアシスを根拠にして何軒かのリゾート・ホテルと洋風海の家というかレストラン兼土産物屋が集まっており、海水浴客が水着でビールを飲んだりピザだのスパゲティだのを食べたりしている。

もともとマスパロマスという地名はこの灯台とオアシスの一帯及び東に広がる砂漠を指していたのだろうが、隣町プラヤ・デル・イングレスが手狭になったことから、観光開発が進んできたのだろうと想像される。灯台から西に広がる荒れ地も大がかりな工事中であった。


ドイツ人とパック旅行

ドイツ人のパック旅行好きはヨーロッパでは有名である。ドイツの大手旅行会社は、自社で飛行機を持っており、ツアーを企画して集客しては、チャーター機を仕立ててヨーロッパ中(いや、世界中)のリゾートに繰り出して行くのだ。僕の泊まったバンガローもその客の90%は同じ旅行会社でパックを申し込んだドイツ人であり、フロントからレストランまで完全ドイツ語対応であった。

この状態はマスパロマスのビーチやプラヤ・デル・イングレスの街に出ても一緒で、ドイツ語はごく普通に通じるし、レストランのメニューには必ずドイツ語がある、と言うか、店頭に書かれた「今日のおすすめ」なんて全部ドイツ語である。雪崩を打って押し寄せるドイツ人観光客のため、地中海のスペイン領マジョルカ島でも同じような状態に陥っているらしい。

これは日本人が「格安3泊4日○万円・現地完全フリー」みたいなツアーでハワイやグァムに押し寄せる構造と酷似している。傍若無人とは言わないまでも、ドイツ人がヨーロッパ随一の田舎者と言われる所以はこの辺りにあるのだろうと、他人事とは思えないうらさびしさを感じたりもしたのであった。人の振り見て我が振り直せとはこのことである。


バンガロー

今回泊まったのはホテルではなくバンガローであった。これは居室と寝室、バスルームと簡単なキッチンを備えた小さな一戸建てが郊外の建売住宅よろしく整然と並んでいる施設で、今回はこの他にフロントや食堂のあるメインの建物があり、中庭には大小のプールが配置されていて、ちょっとした売店、バー、テニス・コートなどもあった。

各戸には芝生の前庭があり、通路の両側の植え込みは手入れが行き届いて赤や黄色の花を咲かせている。これを維持するためにはもちろん毎日スプリンクラーが貴重な水を景気よくまき散らしているし、たくさんの従業員が芝を刈ったり施設を点検したり掃除したりしている。ともかく観光で食って行くために結構な資本が投下されている訳である。

今回のパックは朝食、夕食付きで、食堂にみんな集ってきてはセルフ・サービスのビュッフェから思い思いに食べ物を盛って行く。朝食はともかく夕食の方はとてもグルメ系とは言い難いが、小さな子供を抱えた家族には、自分たちのペースでいるものだけ遠慮なく食べられるという意味で悪くはなかった。

それにしてもドイツ人の大食いにはあきれる。ふだんの食生活は極めて質素なクセに、食べ放題とか取り放題とかになると本当にバカみたいに大盛りにして、それをきれいに平らげてしまうのである。こういうとき彼らはスープを取らない。おなかがふくれて損してしまうからである。サラダだけで大盛り一皿、パスタ一皿、肉一皿、フライ・ポテト一皿、デザートのケーキが3つ乗って一皿、僕なんか絶対割り勘負けしていると思う。


ビーチ

ビーチはとても細かな砂の浜で、青とオレンジのパラソルが整然と並んでいる。ここに荷物を置いて寝そべっていると、係員がどこからともなく忍び寄ってきてカネを集めて行く(寝椅子2つとパラソル1本セットで1日900ペセタ=約千円弱)。もちろん空いている場所なら持参のパラソルを勝手に突き刺しても、バスタオルを直接砂に敷いて寝転んでいても構わない。

入り江でなく直接大西洋に面しているせいか波はやや高く、子供が波打ち際ではしゃいでいる以外は泳ぐ人は少なくて、大人の多くは身体を灼いているか昼寝をしている。最初は水が結構冷たく感じられる。

物売りがココナツやパイナップルを抱えて寝椅子の間を歩く。知らない間に満ちてきた潮が、昼寝している人に突然波を浴びせて穏やかな笑い声が起こる。陽射しは焼け付くように痛いが、風が絶えず流れていて日陰は驚くほど涼しい。子供の歓声が心地よい。

トップレスはごく普通ですぐに目も慣れた。だいたいはおばさんが中心だが、20代と思われる女性も少なくない。まあもう好きにしてくださいという感じである。


プラヤ・デル・イングレス

マスパロマスの隣町プラヤ・デル・イングレス(Playa del Ingres)は、マスパロマスよりは随分前に開けたと思われるリゾート街である。規模も大きく、まだ建設途上のマスパロマスよりも、幾分は街自体が風景としてなじんでいる印象を受けるし、巨大なカタツムリみたいなエクメニコ寺院というのもある。土産物屋やクラブ、レストランなども多い。

とはいえ、ここも基本的にリゾート・ホテルとショッピング・センターで構成される街であることに変わりはなく、この唯物的な感じはどこかで見たことがあると思ったら、それはハワイのワイキキ・ビーチだと気づいた。

この街のビーチはマスパロマス砂漠の東の端にあたる。やや濃い色の砂の浜だが、基本的にマスパロマスのビーチと仕組みは変わらない。ただビーチの背後は切り立った丘になっており、その上の散歩道からビーチやその向こうの砂漠、そして陽光を反射して輝く大西洋を一望できるのは、高台というものの存在しないマスパロマスの宿泊客には新鮮だった。


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