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SOMEDAY

1982.5.21発売
Epic Sony / ESCB-1322

PRODUCER :
佐野元春
CO-PRODUCER :
伊藤銀次
MIX UP ENGINEER :
吉野金次

作詞・作曲・編曲 :
佐野元春
●Sugartime
●Happy Man
●DOWN TOWN BOY
●二人のバースデイ
●麗しのドンナ・アンナ
●SOMEDAY

●I'm in blue
●真夜中に清めて
●Vanity Factory
●Rock & Roll Night
●サンチャイルドは僕の友達

サードアルバム。先行発売されたシングル「SOMEDAY」「ダウンタウン・ボーイ」「Sugartime」を収録(ただし「ダウンタウン・ボーイ」は新録、「Sugartime」は一部バージョン違い)、またアルバムリリース後に「ハッピーマン」がシングルカットされた。

佐野元春が前作に続いてセルフプロデュース、伊藤銀次がコ・プロデューサーとしてクレジットされている。編曲も佐野がほぼ全面的に担当しており、伊藤銀次をブレインとしつつ、事実上佐野がトータルプロデュースした初めての作品である。

このアルバムでは、エンジニアである吉野金次とともにサウンドプロダクションにも佐野が大きくコミットし、ホールエコーの丹念なピックアップ、同じ楽器のパートを何重にも重ねるオーケストレーション、「SOMEDAY」で見せた対位的なアレンジ(主旋律に対して異なる対旋律を同時に奏でる)、「ハッピーマン」でのボーカルをディレイさせて左右のチャンネルに振る手法など、立体的で奥行きのある音像を得るためにさまざまな工夫が凝らされている。

ファーストアルバムからこのアルバムまでを指して、佐野は「街」をテーマにした3部作だと言っていた時期もあるが、それは決して当初から意図されたことではなく、佐野の中での問題意識、原風景が、ファーストアルバムから連続性を保って成長し、このアルバムで結果的にいったん完結したのだということであろうと思う。タイトル曲「SOMEDAY」では、「ガラスのジェネレーション」で宣言したイノセンスが、現実との衝突の中で決して楽観的なイノセンスそのものではあり続け得ないことの認識を歌い、そうしたイノセンスの危機に直面した人間が、そこにおいて何を選び取るのか、何に信頼するのかということを厳しく問いかけている。また初期のモニュメント的大作「Rock & Roll Night」で歌われる「瓦礫の中のゴールデンリング」という象徴的な一節は、そのようにして試されるイノセンスの行方を、佐野がその後ずっと追い続けることの暗示的な宣言と考えてもよかろう。

目立ったシングルヒットこそなかったものの、このアルバム及びその後の全国ツアーで佐野は数多くの熱狂的なファンを獲得、次作「No Damage」がチャート1位となる布石となった。デビュー以来83年に渡米するまでの佐野の活動を仮りに初期または第一期と考えるなら、このアルバムは間違いなくその時期の頂点をなす作品であり、また佐野のこれまでのキャリアの中でも最も重要な作品の一つに数えられるべき代表作である。

佐野がこの作品で最終的に確立した都市生活者としての視座、語彙と文法は、その成功によって多くのフォロワーを生み出した。しかしその多く、ほとんどすべては、佐野の達成をごく表面的にかすめ取っただけのインチキな音楽的ダミーとでもいうべきものであり、佐野は、一時は強い力を獲得したかに見えた自身の表現が、そうした商業的模倣によって急速に力を失って行くさまを目撃しなければならなかった。こうした経験から、佐野は、常に自らの表現を更新し続けることの必要性を強く意識したのではないかと思う。

個人的にはアルバム「Heart Beat」と同じく、このアルバムも冷静に論評することの困難な、思い入れの多いアルバムではあるが、「SOMEDAY」や「Rock & Roll Night」といった「名曲」より、「麗しのドンナ・アンナ」のような曲の方が単純に愛せるとは思う。ともあれこれはちょっとという曲のまったくない稀有なアルバムであることは確実である。

僕が初めて手にした佐野元春のアルバムであり(というか当時は友達にダビングしてもらったテープで聴いていた訳だが)、高校2年生から3年生の頃にかけて、本当に毎日のように、テープがワカメになるくらい聴いていた。当時は46分テープに録音していたのだが、テープサイズが足りず、A面の最後、「SOMEDAY」のフェイドアウトで佐野が「Now we are standing inside the rain tonight」と叫ぶあたりで唐突に曲が途切れていた。今でもこの曲を聴くと、ここでブツっと途切れるのではないかと反射的に思ってしまう。無人島の10枚には確実に入る1枚である。



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