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Cafe Bohemia

1986.12.1発売
Epic Sony / ESCB-1325

PRODUCER :
佐野元春
ENGINEER :
阿部保弘、吉野金次(M-7)
RE-MIX :
Allan Winstanley、John "Tokes" Potoker、
Steven Stanley

作詞・作曲・編曲 :
佐野元春
●Cafe Bohemia (Introduction)
●冒険者たち Wild Hearts
●夏草の誘い Season In The Sun
●カフェ・ボヘミアのテーマ Cafe Bohemia
●奇妙な日々 Strange Days
●月と専制君主 Sidewalk Talk

●ヤングブラッズ Youngbloods
●虹を追いかけて Chasing Rainbow
●インディビジュアリスト Individualists
●99ブルース 99Blues
●Cafe Bohemia (Interlude)
●聖なる夜に口笛吹いて
 Christmas Time In Blue
●Cafe Bohemia (Reprise)

5枚目のオリジナル・アルバム。85年に発売されていた「Young Bloods」「Christmas Time In Blue」及びアルバムに先立って隔月で連続リリースされた「Strange Days」「Season In The Sun」「Wild Hearts」を収録している(一部はリミックス)。

プロデュースは佐野元春自身が担当、佐野は日本で録音した音源を手に渡英し、クライブ・ランガーとのコンビでエルビス・コステロなどを手がけたプロデューサー兼エンジニアのアラン・ウィンスタンレーにミックスを委ねた。アルバムとしては初めてハートランドが全面的に演奏を担当しており、アーティスト・クレジットは「佐野元春 with The Heartland」となっている。また、ハートランドにはさらに「A Young Soul Ensemble」というニックネームが冠せられていて、歌詞カードにはメンバー全員の写真が掲載されている。

このアルバムは前作「VISITOR」から実に2年半以上もの間隔を経てリリースされた。それはニューヨークの熱に浮かされていた佐野が、ホームグラウンドの東京で少しずつクールダウンし、再び地に足を付けた活動のニューモードを模索して行くのに要した期間である。長期に渡るツアー、国際青年年のイメージソング「Young Bloods」、カセットブック「ELECTRIC GARDEN」、そしてクリスマス・シングルのリリース、東京マンスリーと題した中ホールでの月例ライブ、自らのレーベル「M's Factory」の発足、雑誌「THIS」の再刊、先にも述べた隔月のシングル連続リリースなど、様々な試みを続ける中で佐野は、ハートランドとの共同作業を足がかりに、かつて交わした約束と、ニューヨークで手にしたものとが、互いに手を取り合って新しいビジョンを提示するような、自らの活動の次の段階を手探りしていたのだ。

アルバムは、フィッツジェラルド、ヘミングウェイなどの「ボヘミアン達」が集い、ある種の無国籍な雰囲気の中で芸術論、文学論あるいは政治論をたたかわせたという1920年代パリのカフェ・ライフを下敷きに、現代のボヘミアン達の魂の在処を探って行くという構成になっている。冒頭と終わりにはSEが配され、全体としてコンセプト色の濃い仕上がりとなっている。

サウンド・プロダクションとしては、スタイル・カウンシルの「カフェ・ブリュ」「マイ・フェイバリット・ショップ」を強く意識しており、「Young Bloods」は「Shout To The Top」に、「インディビジュアリスト」は「Internationalists」に酷似しているとの指摘もあった。いずれにせよハートランドに上記のようなニックネームをつけたことでも分かるように、ソウルフルな音作りが中心となっている。

収録曲の中で佐野は、現代社会で「個」が「個」であり続けることの困難を歌う。「このソウルを激しくキック」して「風向きをかえろ」と歌う一方で、「いつも本当に欲しいものが手に入れられない」と嘆き、「今、君の目の前で何かが変わりはじめている」と指さしながらその内実は「オレには分からない」と歌われる。純粋にアウトサイダーであることが極めて困難(または不可能)な現代において、佐野は「個」の自覚がどこに行き場を求めればよいのかを探り続けるが、その明確な答えは(当然ながら)得られることはなく、ただ「誰れもが心に」抱えた「見知らぬ夜明け」とつき合い続ける「覚悟」だけが表明されて行く。

このアルバムは、佐野がハートランドとのコラボレーションといういわばリハビリを続ける中で、その率直な問題意識が楽曲の形に結実したものであるということができ、全体としてコンセプト・アルバムの形にまとまってはいるものの、佐野の意識の連続性以外にこのアルバムをトータルに統括する強いモメントは見られない。その意味でこのアルバムは、「VISITORS」以後を総括し、次の「ナポレオンフィッシュと泳ぐ日」につながってゆくための過渡的な作品であるといえよう。また「Young Bloods」「Christmas Time In Blue」を収録したことはこのアルバムの焦点を曖昧にしてしまった。

個人的には「Wild Hearts」「月と専制君主」などが好きな曲だが、「Young Bloods」「Christmas Time In Blue」は好きな曲ではあってもこのアルバムの曲だという意識がない。特に「Christmas Time In Blue」は個人的に大変思い入れの深い曲で、ある意味で最も大切な曲の一つだが、それだけにアルバムを聴くたびに春でも夏でもこの曲が最後に流れてくるのはちょっと抵抗がある(のでふだんはその前で切ってしまう)。やはりこの曲は年に1回だけイブに聴きたいものである。

「99ブルース」は代表曲に数えられる1曲で、示唆的な部分も確かに多いが、歌詞がやや類型的で一面的なのが気になる。「大切なキャッシュカード」のくだりとか、「得意げな顔したこの街のリーダー」のくだりだとか、他のラインに比べてちょっとイメージが貧弱ではないかと思う。



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