何だかみんなすごく怒りっぽくなってる気がする。芸能人のスキャンダルや政治家の失言をこれでもかとボコボコにするし、不謹慎なツイートやブログエントリーが炎上する。電車が遅れれば駅員に殴りかかるし、刃物を持って振られた女を刺しに行く。みんなイライラして些細なことでキレるし、キレたら何をするか分からない。

通勤電車では空席を目がけてマジもんのダッシュでショルダーチャージくらいは日常茶飯事だし、自動改札にひっかかると露骨に舌打ちされる。クレーマーは初めから粘着する気満々で店にやってくるし、対応に出てくれない上司は後で文句だけ言う。誰もがイライラしている。そして誰もが疲れている。

何年か前に書いた通り、グローバリズムは個人をむき出しの国際競争の中に放り出した。通信技術や運搬手段の発達で世界がどんどん狭くなり、経済における国境の意味がどんどん失われるにつれて、国際競争は国家の枠をすり抜けて僕たちの日常にまで入りこんでしまった。

技術や技能、専門知識・スキル、特殊な才能など、個人として人より秀でた付加価値を持たない人間は、世界中の人々の中で上から順に序列をつけられ、それに見合った仕事と収入しか得られなくなる。所得格差は広がり、単に頑張るだけでは報われない社会になりつつある。世界は引き裂かれつつあり、だからみんなイライラして疲れているのだ。

オレの付加価値は何か。会社が他の誰かではなくオレを雇ってくれている意味は何か。オレは自分の何を売ってカネに換えるのか。

このサイトを開設して今月で20年になる。その間、僕はずっと、自分は何者で、どうやって生きて行けばいいのか、生き延びて行けばいいのかを自分に問い続けてきた。そしてまあ、何とかここまでやってはきた。ここにいるのが自分でなければならない理由を、今年も証明し続けて行くしかない。苛立ちよりは危機感を相棒に。

2017年1月
西上典之 a.k.a.Silverboy