logo 縮む社会、捨てる選択


日本は縮み始めている。人口は減り、貿易収支は赤字に転じた。人口構成もどんどん高齢化が進んで市場の担い手である若者が減っている。黙っていても経済が毎年成長して行くという時代は過ぎ去り、何もしなければ市場が少しずつ縮小して行く社会になった。

それはつまり、政治が「増加した富を分配するプロセス」から「新たに生じた欠損を押しつけ合うプロセス」に変容したということに他ならない。その結果、政治はだれがやってもうまく行かないものになり、選挙のたびに勝者と敗者が劇的に入れ替わって、総理大臣は一年で使い捨てられるようになった。

縮む社会で求められるのは、「何をやるか」「どれを取るか」という上乗せの判断ではなく、「何を諦めるか」「どれを捨てるか」という引き算の決断である。そのような場所では生存競争はおのずと厳しくなるだろう。ぼんやりしていると自分自身が社会から切り捨てられてしまう、そういうぎりぎりの緊張感の中で僕たちは生きて行くことになる。

この世界で「捨てられる側」になってしまわないために、僕たちはまず自らの持ち物を厳しく点検し、今となってはもう必要のない説明や言い訳を全部削ぎ落として、自分にとって本質的なものとはいったい何なのかを見届けなければならない。そしてそこにおいて必要となる言葉もまたシンプルで直接的なものであるはずだ。伝えたいことの核心に、最短距離を通り最小の手順でたどり着くことのできる鋼のように強い言葉だ。そういう言葉を僕は手に入れたい。

そういう個人としての「捨てる選択」、自分自身の棚卸をやりきって初めて、僕たちは縮む社会の中で生き延びることができるのだと思う。胸を張って「僕はここにいるよ」と言い続けるために、今年もカラ元気とかやせ我慢とかで何とか毎日をドライブして行こう。


2013年1月
西上典之 a.k.a.Silverboy



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