logo 真ん中であること


100円ショップという業態が現れて久しい。ちょっとした日用品なら100円(本当は105円)で間に合わせてしまうのは今や僕たちにとって当たり前になった。一方でネット通販も隆盛を極めており、特に遠方の名店の品物をネットで購入する「お取り寄せ」がちょっとしたブームになっている。

使い捨てに近い安物買いと、少々高くてもいいものを手に入れたいというブランド主義に消費が二極化する中で、しかし、まともな値段でまともな商品を手に入れたいというごく当たり前のふだんの買い物が難しくなりつつあると感じるのは僕だけだろうか。100円ショップの品物では心許ないが、高級ブランドを買うまでもない、「普通の買い物」ができる場所がどんどん減っている。

これは、もしかしたら我々の社会から「中間層」が失われつつあるということではないかと僕は思う。我が国は真面目な勤労者層に厚く富を配分することで中間層を育成してきたはずだ。資本家ではなく、単純労働者でもない、勤労市民層を我々の経済発展と民主主義の担い手として想定してきたのだ。

こうした中間の分厚い社会階層構造が上下に(特に下の方に)伸びつつある状況を格差社会と呼ぶのは勝手だが、そうやって下の方に落ちこぼれる人のことはいろんな人が大きな声で代弁してくれる割りに、何とか中間に留まろうとしている人のことはあまりだれも気にしてくれない。落ちこぼれる人が多ければそれを支える中間層の負担は必然的に膨れ上がる。それを必死で支えている人たちの切迫感の方が派遣村なんかよりよっぽど大きな問題ではないのかと僕は思う。

救貧、セイフティ・ネットはあってしかるべきだが、「いっそ落ちこぼれた方が楽」な社会を作ってはいけない。そこで踏みとどまり、必死で働き続ける中間層こそ国民国家の礎なのだ。敢えて中間に留まり続けること、真ん中で支えているという誇りを持つこと、それが僕の今年のテーマだ。


2010年1月
西上典之 a.k.a.Silverboy



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