毒入り注意 去年、近所に自然食品の店ができた。入ったことはないが、半年くらい経ってもまだ続いているようなので一応売上はあるのだろう。自然食品、オーガニック、無農薬。実に結構だ。だれだって安全な食品を食べたい。だが、問題は、世界中の人がそう言いだしたとき、40億人だか50億人だかを養うだけの自然食品を生産するキャパシティはもはやこの地球にはないんじゃないかということだ。 毒入りの食品でしかすべての人を養えないとき、自分一人が毒の入らない食品を食べようとすれば、だれかがどこかでその分毒入りの食べ物を余計に口にすることになる。毒入りの食品ですらすべての人を養えなければ、自分が食べるだけでだれかがその分飢えることになる。この国で高価な自然食品を喜んで食べている人たちは本当にそのことを分かってそうしているのだろうかと僕は思う。 構わない、他の人が毒を食おうが飢えようが、僕はまず自分自身の生を確保しなければならない。僕はまず自分が毒を食わなくてもすむようにしなければならないし、そのためにこそ、僕は毎日必死になって働き、眠り、闘っているのだ。毎日生きようと努めているのだ。申し訳ないが他人の生を気遣っていられるほど、僕には余裕なんてない。僕は自分の生に責任を持つだけで精一杯なのだ。 残念なことだが世界は搾取の上に成り立っている。僕たちの生活も搾取の上に成り立っている。僕たちが満腹すればするほど、その分だれかがどこかで飢えている。そして自分一人だけがそこから降りることはできない。それが僕たちの抱えこんだ困難の最も中心的な点だ。地球という環境が有限である限り、生きるということはそこからなにがしかをむしり取るということでしかあり得ないのだ。 正月早々暗い話でアレだが、この話におめでたい解決はない。そのような世界で、そのような生を、僕は今年も必死で生きて行く、それをただ確認したかったのだ。 2007年1月 1997-2007 Silverboy & Co. e-Mail address : silverboy@silverboy.com |