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2002年4月、僕は7年間暮らしたドイツから日本に帰ってきた。夏は蒸し暑く冬は底冷えのする、人間ばっかりウヨウヨしている極東の国に僕は帰ってきた。

自分で言うのも何だが、僕はこの7年間で随分成長したと思う。自発的ではないにせよ、それまでの自分の安全な生活圏から離れ、言葉もろくに通じない海外で生活する経験はいろんな意味で僕を強くした。そのことが今になって分かるようになった。

そこで僕は、いかに僕が世界のほんの隅っこしか知らないかということを学んだ。世界の広さ、多様さの前に僕たちは謙虚でなければならない。僕の知っていること、僕が当たり前だと思っていることは世界の取るに足りない一部に過ぎないのだ。

最初、そのような認識は僕を不安にさせた。自分が寄る辺のない、とても頼りなく心細い存在のように思えた。だが、失敗を重ね、痛い目に遭ううちに、そしてそれと同じくらい素晴らしい体験をし、幸運にも恵まれる中で、やがて少しずつ分かってきた。どんなに自分が些細な存在であるとしても、結局は今自分の身の周りにあるものから始めるしかないのだと。自分でリスクを取りながら少しずつ自分のキャパシティを広げて行くしかないのだと。そしてそのことは、ドイツにいても日本にいても所詮は同じことなのだと。

不思議なことに、そう考えるようになってから、僕は自信がついたように思う。それは自分がすべてを知っているという自信ではもちろんなく、自分は世界の隅っこしか知らないけれど、その隅っこに関してはそれを自分の手でじかに確かめたのだという自信だ。誇り、と言っていいかもしれない。

日本に帰ってきて最初に思ったのは、この国ではそのような直接性がとても見えにくくなっているということだった。僕はたまたま海外に暮らして、それに気づくことができた。しかし、それは決して海外でしか分からないという性質のものではないはずだ。

僕はここで、直接性を獲得するための視点を持ち続けたい。自分が世界とダイレクトに「繋がっている」という実感を、今年もこのサイトで確かめたいと思うのだ。


2003年1月
西上典之 a.k.a.Silverboy



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