logo 小さな世界


クリスマスに僕はパリのディズニーランドにいた。「小さな世界」のパビリオンにはまだ双子の高層ビルがそびえ立っていて、世界中の民族衣装を着た人形が世界は小さいのだと歌っていた。

もちろん世界は小さくなんてない。ディズニーランドでエレクトリカル・パレードを見てクリスマスを過ごす子供たちがいる一方で、同じ瞬間に飢えて死んで行く子供たちが世界のあちこちにいる。その隔たりを「世界は小さい」というレトリックで埋めることはできない。

僕たちはその事実を忘れてはならない。僕たちが今、取りあえず飢える心配のない生活をしているのは、何の根拠もない偶然とかラッキーの産物に過ぎないのだ。僕たちが不自由のない生活をしていることが、確実にだれかの命と引きかえになっている。その事実の前に僕たちは謙虚でなくてはならないと思う。

しかし、そのことは、僕たちが何かを恥じたり、負い目に感じたりしなければならないということを意味しない。なぜなら、僕たちも飢えた難民の子供たちも、世界から疎外されているという点で、そしてそれにも関わらず世界に対して当事者であり続けるという点で、結局は同じ地平に立っているからだ。僕たちも飢えた子供たちも、この暴力的な世界の前で、途方に暮れる心細く頼りない存在として等価だからだ。

僕のサイトもオープンして5周年を迎えようとしている。僕は、このウェブ・サイトに、愚にもつかない戯言を書き散らかし続けることで救われてきた、確実に。これは僕のためのサイトだ。だれかがだれかを踏みつけにしなければ生きて行けない、タフというには余りにもタフな世界で、僕の目線が下がってしまわないようにするためのサイトだ。おそらくこのサイトはこれから僕にとってますます切実なものになるだろう。そしてそれが、あなたにとっても切実なものであればいいと思う。

現実の格差が世界を隔てれば隔てるほど、僕たちは存在の本質としての等価性つまり「世界の小ささ」について考えない訳には行かない。「It's a small world after all」と人形たちは歌っていた。そう、世界は小さいのだ、結局のところ。


2002年1月
西上典之 a.k.a.Silverboy



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