インターネットに唾を吐け アメリカでの話。トイザラスがネットでクリスマス・プレゼントの注文を受け付けすぎて、在庫管理や配送が追いつかず、やむなく顧客に詫び状とクーポンを配ったとか。いうまでもなく僕たちの生活はネットだけでは完結しない。ネットでクリスマス・プレゼントをオーダーしても、だれかがそれを作り、包装し、玄関先まで持ってきてくれなければ僕たちはそれを手に入れることなんてできやしないのだから。確かに顧客としての僕自身は部屋から一歩も出なくてもいいかもしれない。でもドアの外ではだれかが僕のプレゼントを届けるためにリアルでマテリアルな汗を流して働いている。 ネット社会だとだれかが言うけれど、人間が電気信号を栄養にできない以上、僕たちはどこまで行ってもこのリアル・ワールド、マテリアル・ワールドから自由になることはあり得ない。インターネットは確かにいろいろなものの成り立ちを劇的に変えたしこれからも変えようとしているけれど、それは所詮マテリアル・ワールドの中の回路を洗練しただけのことに過ぎないのだ。 「インターネット」は魔法の呪文じゃない。そう唱えるだけで複雑な問題が一瞬のうちに消えてなくなるなんて、そんなのは大嘘だ。コミュニケーションの形が少しばかり変わったからといって、人と人が関わり合うことの本質は簡単に変わったりしない。僕はそう思う。 2000年。僕は僕のクラブをもっとハード・エッジなものにしたいと思っている。もっと今まで以上に言葉の力だけでガツンと脳天を直撃するような強さが欲しいと思っている。もちろんそれは文章が難解でよいということを意味しない。スタイルは文脈に依存する具体的なものだが、あえて一般論を言えば、僕は新しい言文一致が必要だと思う。僕たちの日常に近い言葉でガツンとやる。それがテーマ。 本質的なことを話したい。リアルなことを話したい。今、ここで。だって、インターネットそのものに何かの価値がある訳じゃないんだから。所詮ただの電話線じゃねえかこんなもん。 2000年1月 2000-2001 Silverboy & Co. e-Mail address : silverboy@silverboy.com |