logo A Story About You / Res. 5 coconut


アルバム「VISITORS」がリリースされた1984年5月、あなたは何歳で、どこで何をしていましたか。

――広島の県立高校に通う十五歳でした。小、中学と硬式野球をやっていましたが、どうにも体育会的な縦社会に馴染めず、高校では迷わずクラブはやらずに、ご多分に漏れずバンドを組んでました。佐野元春もコピーしました。音楽室で「悲しきRADIO」のピアノのフレーズをポロロ〜ンって弾いてました。女の子が「キャ〜!」って…、俗物でした。今もですが…。

「VISITORS」はいつ頃、どのような形で買いましたか。

――「VISITORS」を思い出すたびに悲しい記憶が蘇ります。近所のレコード屋で買ってきたんですが、聴く前に新聞読んでたんですよ。で、その手でアルバム触っちゃって…、「わあああっ!」…、まっさらで真っ白なジャケットにボクに真っ黒な指紋の跡がベッタリと!慌てて固く絞った濡れ雑巾で拭いたのですが、これがいけなかった! 黒い指紋の跡が広範囲に伸びて何だか薄汚れてしまいました。強烈にへこみましたね。その後「VISITORS」を聴きましたが、どことなく上の空でした。

あなたは「VISITORS」をどのように聴きましたか。

――指紋騒動は置いておいて、まず思ったのが「まずい、意味わかんねぇ〜や!」って感じでした。メロディーもあるにはあるけど、これまでとは趣がずいぶん違う。佐野のヴォーカルスタイルもデヴィッド・ボウイやボブ・ディランみたいだ。サウンドストリートで事前に聴いていた「TONIGHT」だけが唯一耳に心地よかった気がします。
ただこのアルバムを「つまらない」と言ってしまうのは明らかに「ダサい」と直感的に思いました。俗物なボクは次の日学校でこのアルバムがいかに素晴らしいかを友人の前で切々と語ったけど、説得力無かっただろうなぁ。
このアルバムが本当にイカしてると思ったのはもうちょっと先のことで、その年の夏のある日、一緒にバンド組んでいた友人の家に遊びに行った時の事です。そいつの家の窓が開いてて、中から大音量の「WILD ON THE STREET」が響いてました。「何だ? かっこいいじゃん! ははーん、こうやって聴くものなんだな!」と一人勝手に納得したのを覚えています。

「VISITORS」というアルバムは何だったのだと思いますか。

――佐野が当時ニューヨークで体感したヒッピホップ等に触発されてこさえたアルバム、それが「VISITORS」…、という認識です。このような音楽をそれまでに聴いたことが全く無かったので、衝撃というより思考停止…、「分からないところが分からない」といった感じでした。ただ当時とっても前衛的に思えたこの作品も、今聴くと当たり前のことですが、しっかりポップミュージックです。ポップミュージックだからこそ、今日まで楽しく聴くことができてるんだと思います。

「VISITORS 20th Anniversary Edition」は買いましたか。

――CCCD回避。買いました。今度は指紋がつかないように気をつけています。ただ「コンプリケーション・シェイクダウン」のプロモ…、あれはお蔵入りでもやむ無しか?!


coconut
サラリーマン時代は宴会部長として重宝がられたが、元来の根無し草体質、たった二年で退社し、現在はブティック経営。座右の銘は「楽しくないことは正しくない」、好きなアーテイストはポール・マッカートニー、クリス・レインボウ、ロイ・ウッド…、そして最後に!佐野元春。熱烈な赤ヘル狂でカープコラム「敢えて土佐礼子」を現在配信中(マジくだらねぇ)。



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