logo A Story About You / Res. 3 Sunchild


アルバム「VISITORS」がリリースされた1984年5月、あなたは何歳で、どこで何をしていましたか。

――都内ミッション系私立女子高に通う、茶色のローヒールシューズにボストンメガネ、チェックのスカート、クルーソックス、10代の透明な感受性という美味な響きに酔って、街の詩人にアイデンティファイしていた高校2年生でした。何か自分は周りの普通の高校生が知らない特別素敵なことが街で起こっていることがわかっているんだ、という意識でいました。学校の友達への手紙の最後にはお決まりの「Be Positive!」を書き、毎週のサウンドストリートの元春宛に手紙を書いていました。
1984年5月、ちょうどニューヨークから帰国後のこの時期に、ある収録後の元春に会うことができました。グレーのコロボックルみたいなつま先が丸いグレイのブーツ(当事私はそう思いました)とグレイのレザージャケット、この頃していた背中まで届く細長い三つ編み(さわっちゃった、ごめんなさい)。握手とサインを求めるとOKの返事、ポケットからメガネをとりだして私の顔を見てくれました。あの彼独特のあったかい空気が今でも忘れられないです。後にも先にもあれっきりですが今考えてみると貴重な時期の彼に会えてよかった…。ちなみに写真集の「SCRATCH」にサインしてもらいました。ファン仲間の一人は「Tonight」の12インチレコードでした。

「VISITORS」はいつ頃、どのような形で買いましたか。

――地元のレコード屋さんで予約して発売日に手に入れました。元春の情報はラジオで事前に知っていたのでものすごく楽しみでした。記憶はさだかではないけど特典で、紙製の「TONIGHT」の袋か、マンハッタン橋のポスターはこのときもらったのかな?

あなたは「VISITORS」をどのように聴きましたか。

――はじめてレコードに針を落とした瞬間のことはすごく憶えています。
B面の「VISITORS」からだった。あの強烈なイントロが最初で。魂が舞い上がりました。ものすごく楽しみにしていたんで。言葉のひとつひとつ対峙しながら、聞きました。元春の歌詞は全部、分厚いペーパバック型のノートに書き写してました。聖書やお経など大切なものは書写したいという思いは昔からあると思うけれど、当時の私にとっては元春の歌詞でした。元春の、作品を透明に伝えたいという思い、ONE TO ONEのコミュニケーション、そして世界で起こっていることに対して、この曲をきいている自分自身が何を思うのか、どう祈るのか?という当事者意識を教えてもらいました。
(「プラスティックなソウル」の意味についてレディオショウの元春宛に書いた手紙が何年か後の雑誌「THIS」にのっていたのを、元春も学生時代たむろしていた大学の通称四丁目で読んでいました。そして、その電気的な…という言葉が新しい航海につながったのかな!?)

「VISITORS」というアルバムは何だったのだと思いますか。

――十代の私に、いわゆるつまらない大人の価値観に従うか、ロックスピリットを信じてそれに従うかを体と精神を使って示してくれた一人の勇気あるアーティストの記録。
元春自身が伝えたかったロックスピリットというものに元春自身が忠実であった証であり、だからこそあの時代も、ニューヨークも彼と呼応したんだと思う。
あの年のニューヨークという世界の縮図のような街でサバイバルすることで、私にグローバルな視野と無関心から当時者意識、真実を見極めていく心の目というか賢さ、をビートと言葉と音楽を通して伝えてくれた。
あの冒険がなければ、今の元春はいないと言って過言ではないくらい貴重なアルバムだと思う。
(元春!それを10代の私に示してくれたことを尊敬し感謝しています。ありがとう)

「VISITORS 20th Anniversary Edition」は買いましたか。

――買いました。未公開のコンプリのDVDがうれしかったです。特に新鮮さはなかったけど。「New Age」の振りは昔真似してやってたなと思いました。


Sunchild
「HEY! HEY! HEY!」公開録音の貴重な参加レポートを送ってくれたこともある筋金入りの佐野ファン。



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