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アルバム「VISITORS」がリリースされた1984年5月、あなたは何歳で、どこで何をしていましたか。

――東京三軒茶屋でひとり暮らし、広告制作会社の宣伝部で、グラフィックデザイナーとして働き出した頃です。

「VISITORS」はいつ頃、どのような形で買いましたか。

――覚えてないけど、たぶん発売日もしくはそれに近い日に、会社帰りにでも買ったんじゃないんでしょうか?

あなたは「VISITORS」をどのように聴きましたか。

―― 佐野くんはデビュー当時から知っていたけど、実はこのアルバムがわたしにとって初の、リアルタイム購入アルバムになります。
アルバムを全編通して聴いたときも、巷でいまも言われているような楽曲・歌唱スタイルの変化に対するショックはほとんどなかったですね。
わたしの場合はVISITORS以前のアルバムは後追いで聴いています。
[VISITORS]が出る、たぶん1年くらいの間にまとめて聴いていると思うのですが、佐野元春はこれでなければ、という固定観念もわたしは持ち合わせていませんでした。
モトハルレディオショウで事前に何曲か収録曲を聴いていたことも、初聴きで驚かなかった理由の一つかもしれませんね。
レディオを通してわたしが持った佐野元春像が、性急で、なにか面白くていままで観たことないことを次々ぱっ、ぱっ、と実現してしまう人、というイメージ。
だから[VISITORS]を聴いたときも[佐野くんらしいなあ。]と思ってました。
音に対する抵抗もまったくありませんでした。 ただ、ほかにはない、とは思った。
[complication shakedown]はいまでも1番好きな曲ですが、当時どうしても[愛を込めてcommunication breakdown]という意味が実感として理解したくて、(辞書など引いても[breakdown]に対する納得できる訳がなかった)自分は英文科を出ていたくせに、友人なんかに尋ね回ってたことを覚えてます。
ツアーもどこで観たか覚えてないけど行きましたね。たぶん会社の同僚とだと思います。
アルバムはいつもステレオセットの前に、ほかのレコードと違うブルーのビニールに入れてディスプレイしてました。

「VISITORS」というアルバムは何だったのだと思いますか。

――佐野くんにとっての必然。 これがなかったら、いまの佐野元春があるかどうか…。

同時に、やはり日本の音楽史上、貴重な、意味ある作品。

そして三つ目に… 少し脱線します。
[VISITORS]からあとの、[エレクトリックガーデン]、そして雑誌[THIS]に至る佐野くんの自己プロデュースが隅々まで行き渡った一連の活動は、当時グラフィックデザインの仕事をしていた自分にとって、とても興味惹かれるものでした。
どっちもグラフィック的にカッコよかったしね。
その露出の仕方は、他のアーティストにはないものだと感じました。
自分の露出を、自覚的に自己コントロールしているのが感じられるクリエイティブ。
佐野くんの意思が、グラフィックに高い精度で具現化されてたと思います。
いま思うと恥ずかしい告白ですけど、[THIS]片手に通勤電車なんかに乗ってた(笑。
佐野元春という人はもともと自己プロデューサー的要素を多く持ち合わせてると思うのですが、ある意味アルバム[VISITORS]は、これら佐野くんの自己プロデュースの[本当の始まり]と言える作品だと思っています。

そしてわたしは、自己プロデュースする佐野くんに惹かれてくわけです(笑。

「VISITORS 20th Anniversary Edition」は買いましたか。

――買いました。発売日当日に、ヨコハマ元町のタワーレコードにて。


kyoko
ウェブ・サイト「Fool's boat」のオーナー。僕のサイトでも何度かコメントを寄せてもらっている。



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