logo A Story About You / case 3 村上奈途子


アルバム「VISITORS」がリリースされた1984年5月、あなたは何歳で、どこで何をしていましたか。

――5歳(ごしゃい)です。田舎ながらもマンモス公立幼稚園に通ってました。当時は生真面目な幼稚園児でした、多分。というのは、運動会か何かで、みんながあっちゃこっちゃ向いてひっちゃかめっちゃかになってる中、一人びしっと腕を伸ばして先生の方を向いて必死に話を聴こうとしてる写真が残ってるから。

「VISITORS」はいつ頃、どのような形で買いましたか。

――高校生になりたての'95年に、中古のLPを800円で買いました。中古CDは見つけられなかったので。中古CDを買ったのがそれから1年後くらいでしょう。多分。ちなみに佐野さんを聴き始めたのが'95年の年初あたりからです。

あなたは「VISITORS」をどのように聴きましたか。

――当時は家のレコードプレイヤーがまだまだ元気だったので、LPも聴けました。ただなにぶん不便なので、LPの音をMDに落として聴いてました。今思ってもなかなかファンキーな聴き方だ。いい音でしたよ。

不思議なんだけど、Wild on the Streetを初めて意識的に聴いた時、「これは絶対どこかで聴いたことがある!」って思った。それも、すごくいい音で聴いた憶えが。まさに家のでっかいステレオじゃないと聴けないような音でね。特に「俺を壊して欲しい/バラバラになるまで」辺りのくだり。

でも、父親も母親もその頃はまるで音楽とは縁もなかったそうだし。なんなんだろう。謎です。Somedayを初めて聴いた時もそんな感覚はなかった。

ちなみに、当時は、「言いたいことはよくわからん、でも音楽としてスゴイ」という感想を持っていました。

「VISITORS」というアルバムは何だったのだと思いますか。

――何なんでしょうね。仲間とつるむのでなく、一人で生きていくということに、まさに生身で直面した佐野の軌跡とでも言うんでしょうか。発売当時、そう思ったファンがどれだけいたかは分かりませんけれど。

ニューヨークってそんな殺伐とした街なのかな、とか…おぼろげに以前は感じていましたが、どうも土地は関係ないんだな、ということを、今回改めて聴いて感じた次第。(安易にこの言葉は使いたくないけれど)同意できるというか。

この歌の主人公のように、なんかもう無茶苦茶、孤独を感じてしまう自分の性格は損だと思うけどね。でも、関わり合いなんてこんなもんだと思う。正直。いまだに期待しすぎて損する私だったりもするから余計そう思う。

このアルバムで表現してあるのが、そういったところなんじゃないか、と推測できるようになった、というだけ、私も95年当時からずいぶん変わったのだと思います(じゃないとヤバいけど)。

少なくとも、癒す為の表現とか、慰め合う表現…というよりは、コンプリケーションシェイクダウンな状況の中で生きていくために自分を鼓舞する為の表現、だと思います。しかしこれがチャートで1位になる、というのは謎。客観的に見て。

「VISITORS 20th Anniversary Edition」は買いましたか。

――はい。思ったより手に入りにくくて一瞬焦りました。
New AgeのPV、なんでお蔵入りになったんでしょうね?いいと思うけど。


村上奈途子
ウェブサイト「the color RED」のオーナー。公式サイトのフォーラムで最初に名前を見かけたときには確かまだ高校生だったと思うけど、今では大学も卒業して働いてる。「Pop Children?」という企画で佐野の曲をクロス・レビューしてもらった。



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