logo オリジナル・トラック解説


01 COMPLICATION SHAKEDOWN 激しいアタック音でアルバムのスタートを告げる。これはアルバム「SOMEDAY」の最後に報われないまま眠らせざるを得なかった無垢な魂を再びたたき起こすものだと説明された。イメージの断片を矢継ぎ早にたたきつける手法はこのアルバムの特徴の一つ。テレビ音声を取り込んでギターと対話するアイデア、クラブ・ミックス、「愛をこめてコミュニケーション・ブレイクダウン」と歌われる文学性、間違いなくこれは今もなお佐野元春の前衛である。前衛なのにポップとして成立しているところがこの曲の「凄み」なのだ。何度もアレンジを変えてライブでも歌い続けられている。このアルバムからの2枚目のシングルとしてカットされ、12インチ・シングルとしてもクラブ・ミックスがリリースされた。

02 TONIGHT 渡米して比較的早い時期に作られたと言われる先行シングル曲。このアルバムの中ではメロディがはっきりした曲のひとつであり渡米前の作品との連続性を伺わせる。また増5度和音の効果的な使い方はビートルズの影響をも彷彿させる部分もある。ポップな曲調に乗せて歌われた「No More Pain Tonight」というフレーズが20年の時を経て重々しいファンクに生まれ変わり、まったく新しい意味あいを獲得したのは周知の通り(ミルク・ジャム・ツアーで披露、後にシングルとしてリリース)だが、それまでライブではほとんど歌われたことのない曲だった。クラブ・ミックスが12インチ・シングルでリリースされたが、その時のカップリングのインストルメンタルは未CD化。

03 WILD ON THE STREET ブラスをフィーチャーしたファンク・チューン。ライブでも比較的原曲に忠実なアレンジで演奏されることの多い曲であり、ライブの時は佐野がカウベルをたたくのが通例。「オレを壊して欲しい」という激しい意識の加速の仕方はニューヨークでの佐野のテンションの高さを示しているようで興味深い。都会のジャングルの中で生き延びようとするサバイバル・ソングだが、「ジャングル・ピープル」というフレーズが黒人のコーラス担当女性に人種差別的と誤解されたエピソードも。クラブ・ミックスが存在し、「COMPLICATION SHAKEDOWN」12インチのカップリングとして収録された。

04 SUNDAY MORNING BLUE ブルーな日曜の朝 スロー・チューンであるが、タイトルの通り内容は苦々しく曲調も重い。ありがちな泣きの入ったバラードとは対極にある曲である。ニューヨークで知り合ったロン・スレイターの訃報を聞いた朝のことを歌っているとも言われる所以だ。ここでもイメージのカット・バックが効果を上げている。ここで歌われる「四文字言葉」とは果たして「LOVE」なのか、それとも「窓辺の天使」や「寄り添う恋人たち」と対置されて虚無感や無常感を際だたせる卑語なのか。中間部をカットしたショート・バージョンでシングル「VISITORS」のカップリングになっているがそのバージョンは未CD化。

05 VISITORS タイトル・チューンであり「街の詩人たちは憂鬱な恋を競う」といった文学的、詩的な表現が印象的である。曲調はギターが重く鳴るヘヴィな8ビート。「This is a story about you」というフレーズはこのアルバムの重要なテーマの一つで、「ELECTRIC GARDEN」収録の「N.Y.C. 1983〜1984」から派生したと思われる曲である。但し曲そのものとしてはやや単調に流れる部分があり、完成度は必ずしも高いとはいえないのではないかと思う。このアルバムから3枚目のシングルとしてカットされた。

06 SHAME――君を汚したのは誰 社会問題に対するプロテストを示すときによく演奏される曲。重々しいスロー・ファンクである。歌詞そのものは高度に抽象的で、そこに具体的に何を感じるかはリスナーに委ねられていると考えるべきだろう。中盤で「偽り、策略、謀略…」と続けたあと「ひどすぎる」と佐野はつぶやくが、その部分の英訳は「It's a shame」。それはつまりそれらが自分でないだれかの責任なのではなく、まさに僕たち自身の「恥」なのだということに他ならない。日本語の歌詞のどこにも現れない「SHAME」がタイトルとなっていること、そしてこの曲が先行シングル「TONIGHT」のカップリングであったことの意味を考えなければならない。

07 COME SHINING ラップ、ヒップホップに接近したといわれるこのアルバムにあって、実際には唯一ラップと呼び得る作品。「ビートは続いて行く」と歌われ、このアルバムで最もオプティミスティックな世界観をもつ曲だということができるだろう。アコースティック・ギターを効果的にフィーチャーしたサウンド・プロダクションは、現在の日本語ラップの水準から見ても高い音楽性を持ち、このとき佐野が試みたのが単なるヒップホップの「直輸入」ではなかったことの例証になるはずだ。ライブで何千人という若い男女が「Let's make love tonight」と声を張り上げるのはある意味壮観。シングル「NEW AGE」のフリップ・サイドとしてシングル・カットされたが、その際には中間部がカットされたショート・バージョンに編集されており、このバージョンは未CD化。

08 NEW AGE このアルバムのハイライトの一つで、後にアレンジを変えてライブで歌われスタジオで再録もされた。歌詞はやはり抽象的だが、これまでのスタイルの中から表層的なものと本質的なものを峻別し、前者を大胆に捨て去りつつ表現の核心を携えて常に前進するのだという高らかな意思表明であり、「それが人生の意味」だと歌うアンセム。やはりこのアルバム収録のオリジナル・バージョンでこそ聴きたい重厚かつ躍動的な曲である。アウトロのリフレインではビートルズの「The Continuing Story Of Bungalow Bill」をもじって「Hey, Bungalow Bill」とコーラスが入るが、一部で言われるように「What did you kill」とは歌われていない。アルバムから4枚目のシングルとしてカットされたが、その際にはやはり中間部が編集されたショート・バージョンになっている。



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