logo 北海道(積丹・登別温泉)


■出発前 台風22号

●今年は夏休み以外にもう一週間休みをもらえることになっているので、これまで行ったことのない北海道に行ってみようかということになった。いろいろガイドブックやらウェブサイトを調べた結果、美味い海の幸が食いたいという希望と温泉にゆっくり入りたいという希望を共に満たすため、行き先は積丹と登別温泉というところに落ち着き、期末の繁忙期が終わって冬が来る前の10月に決行となった。
●その線で旅行代理店に飛行機とホテルとレンタカーを手配し、すっかり支払いも済ませたのだが、直前になって台風22号がちょうどその時期に日本付近にやってくるという話になった。出発予定の10日にはちょうど関東地方を通り過ぎ、北海道方面へ抜ける途中らしいということで、前々日くらいからずっとテレビやウェブの台風情報をチェックしていた。台風は待っていればいずれどこかに行ってくれるが、行きの飛行機が飛ばなければそもそも旅行にならない。
●幸い9日に関東地方を直撃した台風も(おかげでナビスコカップの準決勝、FC東京×読売は延期になったが)、その後は大きく東にそれて北海道直撃は免れ、9日午後の羽田−新千歳便は軒並み欠航だったのが、10日には予定通り飛んでくれることになった。11日の天気予報がかなりイヤな感じだが(降水確率70%とか80%とか)、まあ、行きさえすれば何とかなるだろうということで胸をなで下ろしたのだった。

■2004年10月10日(日) 小樽の観光化を嘆く

●朝6時半に起き、8時過ぎに家を出た。そんなに早く出なくても羽田には着くはずだが、京急が台風の影響で一部不通になっているのでダイヤが乱れている可能性があるのと、昨日午後の羽田発の国内線がほとんど欠航になっているので、その振り替えを希望する人でカウンターが混乱していると困ると思って早めに出かけたのだ。
●ANAのカウンターが結構な行列でそれなりに時間がかかったが、それ以外はまず順調。飛行機はやや遅れ気味ながらもきちんと離陸した。11時の便だったんだけど、機中で何か食べ物がもらえるかと思っていたら飲み物しかサービスがなかった。「サンドイッチくらいは出たはず」という一部の情報を信じていたのだがガセだったようだ。仕方なくコンソメスープで空腹を紛らす。国内線のコンソメ、一度飲んでみたかったんだよね。
●12時半過ぎに新千歳に到着。荷物をピックアップしてニッポンレンタカーのカウンターへ。ここでドキュメントだけを受け取ると営業所までバスに乗せられる。何だ、空港でクルマがもらえるんじゃないのか…。このパターンはどこかでやったことがあるぞ、と思って記憶をたどると、そう、確かポルトガルでレンタカーを借りたときだっけと思い出した。
●送迎バスの窓から見る空港周辺の景色は何となくシュトゥットガルト空港の近くを思わせた。だだっ広い視野がヨーロッパっぽい。ほどなくレンタカーの営業所に着き、トヨタのWILLをあてがわれた。大きすぎず小さすぎず、まあ、悪くない。何にしてもこれまでドイツでイヤというほどレンタカーを借りてきた経歴があるので、日本のレンタカーなんて楽勝である(フィアットを借りてバックギアの入れ方が分からなかったときは焦ったもんな)。
●1時20分頃、営業所を出て走り出す。営業所でもらった地図を頼りにまずは小樽を目指す。事前のリサーチだと千歳から札幌まで1時間とか1時間半とかって書いてあるのでちょっとビビっていたが、道央自動車道は渋滞もなく快適、そのまま札幌自動車道に入り、小樽までは結局ちょうど1時間。この街は駐車場が少なくクルマは持て余すと書いていたガイドブックもあったのでその点もビビっていたが、運河のすぐ横の駐車場に簡単に入れることができた。連休の中日だというのに。
●それにしても人出の多さはさすがだ。ここまで観光化しているとは思わなかった。ちょっとげっそりである。まあ、地方都市が食って行くには持てる観光資源を活用しない手はないだろうから仕方ないと思うけど、もうちょっとしっとりした北国情緒みたいなものを期待するだろう、普通。何か嵐山とか原宿みたいで、今やどこの観光地に行ってもアイテムが違うだけで見え方は一緒みたいな感じ。再開発とかああいう感じで。
●あんまり時間がないので、まずは旧日本銀行小樽支店へ。ここは金融資料館になっていて、これが結構楽しめた(入場無料)。1億円の束を持ち上げるコーナーがあるが、中に入っていたのは印刷していない紙幣用紙1億円分だった。まあ、15年ほど前には仕事でイヤというほど1億円の束なんて運んでいたので僕としては感慨もないのだが、実際持ち上げてみるとかなり重い。
●運河と倉庫をバックに写真を撮って再びクルマに乗り込む。暗くなる前に宿に着いておきたいのでやや焦る。駐車場はちょうど1時間で320円。都心のスタンダードからすればかなり良心的である。ここからは高速道路じゃなく一般国道を走る。レンタカーにはカーナビがついているが使い方が分からないので単なる地図としてしか機能していない。まあ、それでも随分頼りにはなる。国道5号線を余市へ。余市からは229号線に乗り換えて海岸を積丹へ。
●信号もほとんどなく、日本海を見ながら快調に走る。50kmほどの距離を迷うこともなく約1時間で積丹に到着。目当ての長谷川旅館もすぐに分かった。ここはごく当たり前の旅館である。小樽で一泊してもよかったのだが、北海道まで来て普通のホテルに泊まっても仕方がないので、メシの美味そうな田舎の旅館にしようと思ったのである。小樽は観光客でごった返していたが、ここはオフなのか客は我々だけのようだ。
●おじさんの案内で部屋に通される。10畳の和室。部屋には風呂も便所もない。テレビも古い。というか建物自体がかなり古いが、全体に掃除は行き届いており、窓ガラスなんてあるのかないのか分からないくらいきれいに磨かれている。余計なものは何もないが必要十分で気持ちのいい旅館である。雨が降り始めているので外に出るのは諦めて風呂に入る。大浴場とはいうものの収容人員はせいぜい数人という程度の風呂だが、貸し切り状態なので問題はない。
●メシは大広間で、ここも我々だけの貸し切り状態だ。これはよかった。何しろ晩メシを美味しくいただくために、昼メシのリカバーを諦めたのだ。これでもかというくらいの海の幸、特にアワビは歯ごたえもしっかりして美味かった。あんなにアワビをガンガン食ったのは初めてだ。ごはんに乗せて食べたイクラもこくがあってよかったなあ。イカも。あとはウニがあればよかったんだけど、残念ながらシーズン・オフだった。
●メシ食ったらすることがなくなったので8時過ぎに寝た。夜中に目が覚めて枕元の時計を見たらまだ12時前だった。

■2004年10月11日(月) 雨の積丹半島

●激しい雨音で夜中に何度か目が覚める(早く寝すぎたせいもあったかもしれない)。夜の間に降るだけ降って朝にはやんでればいいなと思いながら寝たが、起きてみればやっぱり土砂降りの雨。テレビの天気予報によれば一応午後からやむらしいが。
●8時に大広間で朝食。宿泊客は我々だけかと思っていたら、もう一組朝食をとっている大人数のグループがあった。朝から生タマゴや塩鮭、焼きタラコ、イカの刺身などが出てごはんをおかわりしてしまう。こういうごはんのおかずには弱いのである。
●雨の中、9時過ぎには荷物をまとめて宿を出発、途中のコンビニでビニール傘を二本買い神威岬を目指す。国道229号線を30kmほど奥へ奥へと走る訳だが、いかんせん天気が悪く、海岸線の絶景もゆっくり眺める余裕がない。30分ほどで神威岬の駐車場にクルマを入れたときにはかなりの雨が降りしきっていた。こんな天気にわざわざこんな地の果てに来るのは我々くらいかと思っていたが、数は少ないながらもクルマは何台か停まっており、観光バスまである。ご苦労である。傘をさして、駐車場から岬まで20分ほどの遊歩道を歩き始めたが、それでも足許や背中がぐっしょりと濡れてしまう激しい雨で、途中の展望台まで行ったところで断念、アリバイ写真を撮ってクルマに戻った。それでも岬を目指す人は結構いた。
●ジャケットのポケットがなんだかジャラジャラすると思ったら、旅館の部屋のカギを持ってきてしまっていた。来た道を戻って旅館の前も通る予定だったので、その時に立ち寄って返すことにする。また30分ほどかけて激しい雨の中をドライブして旅館に戻りカギを返すが、おじさんは我々がカギを持ち去ったことに気がついていなかったようで、「何ですか?」みたいな感じだった。
●昼メシは旅館の近くの寿司屋でウニとイクラの生ちらし。港で釣り人を眺めて10分ほど時間をつぶし、11時の開店と同時に飛びこんだ。ウニもイクラも堪能したが、いかんせんごはんの量がかなり多く、朝メシもたたっておなかがいっぱいになってしまった。しっかり腹を減らして食うべきもののようである。
●ここから今度は国道229号線を余市に向かって走る。昨日の逆である。雨は小降りになっている。余市では休憩を兼ねて宇宙記念館に立ち寄った。なんで北海道で宇宙記念館かというとここが宇宙飛行士の毛利さんの出身地だからである。プラネタリウムを見たりしてしばし時間を過ごす。それなりの入場料がかかったが元を取れたかは疑問。まあ、要は我々が先を急いでいたせいなんだが。
●次は国道5号線に乗り換えてニセコ方面へ。ニセコでは羊蹄山を望む道の駅でゆっくりコーヒーでも飲むつもりだったが、羊蹄山は雲に隠れて結局全貌を拝めずじまい。道の駅ではコーヒーを飲んで重かった昼メシを胃に落ち着けた。ところで北海道ではこの「道の駅」というのがあちこちにある。まあ、国道沿いのパーキングエリアというか公営のドライブインみたいなものである。トイレ休憩にはちょうどいいかも。
●ニセコの次は洞爺湖を見ていこうという計画だったが、この辺りで既に3時頃となり、登別に到着する時刻が懸念されたため、洞爺湖は諦めて一気に登別を目指すことにする。道道経由で230号線に入り、洞爺湖の横をかすめて噴火湾方面へ。道央自動車道に乗るがこの辺から再び雨が降り出しコンディションの悪いドライブになる。室蘭を経由して登別まで走る訳だが距離的には結構ある。片側一車線の高速道路をひた走るが轍に水たまりができており、気をつけていないとハンドルを取られそうになるので出せるスピードにも限界がある。次第に暮れ始めて視界も悪くなるし、雨は一向にやまないし、厳しい状況である。
●4時半頃ようやく登別東インターに到着、ここから登別温泉のホテルを目指して道道を走る。いよいよ辺りは暗くなり、カーナビ君が頼りだが時折まったく道のないところに現在位置を示す△印が現れたりして不安を誘う。それでもないよりは随分マシ。使い方がよく分からず音声が出ないがまあいい。土砂降りになった雨の中、何とか迷わずにホテルに到着したのは5時前頃、すっかり暗くなっていた。
●ここでは風呂が楽しみだったのだが、露天風呂は土砂降りの冷たい雨のせいで諦めた。それでも熱い湯にゆっくりつかってドライブの疲れを癒す。周囲は土産物屋などが軒を並べているはずだが、もう傘をさして外へ出るのはうんざりである。晩メシは部屋で、いわゆる温泉食である。温泉食というのは刺身や天ぷらや小鉢や茶碗蒸しや一人用の鍋物などが所狭しと膳の上に乗って出てくる例の温泉旅館にありがちな晩メシセットのことであるが、ここのはそのフォーマットを踏襲しながらもありがちな物量作戦に陥らず、さっぱり食べられてよかった。
●ところでこういう温泉旅館では部屋付の仲居さんにやはり心付けを渡すべきなんだろうか。旅行会社経由で手配したパッケージなので渡すのもおかしいかと思い見送ったのだが、それで仲居さんのサービスがつっけんどんになった訳でもなく、最近ではそういう風習も失われつつあるのかもしれないと思うんだけど、実態はどうなんだろう。温泉旅館や観光ホテル関係者からの情報を待ちたいところである。
●という訳でやはり9時半頃には寝た。

■2004年10月12日(火) 地獄

●雨は小降り。朝メシのとき、仲居さんに、チェックアウト前に散歩がてらこの近所の「地獄谷」というところに行きたいんだけど、と訊いてみると、「地獄谷」はところどころから湯気がポヨポヨ出てるだけでつまらない、クルマで奥の大湯沼まで行ってみるべきであると、暗に早くチェックアウトして部屋を空けてくれとのプレッシャーを受ける。その示唆に従い片づけがすんだところで速やかにチェックアウト、クルマでまず地獄谷に向かう。
●ここは植物も生えない谷間に硫黄泉の川が流れ、あちこちから湯気が上がっているという荒涼とした源泉地であり、その風景から地獄谷と呼ばれているらしい。仲居さんはつまらないと力説していたが、これはこれでそれなりに楽しめる。一通り見た後、仲居さんの勧めに従いさらに奥の大湯沼へ。ここは水温が80℃という熱泉の沼であり、水面からもうもうと湯気が昇っている。確かにこれはなかなかの景色であった。
●登別温泉を辞し、道央自動車道で苫小牧西インターへ。ここから道道で支笏湖に向かった。天気は回復し雨はほぼやんでいるが、この道道が途中で舗装が途切れ地道になったのには閉口した。10時半頃に支笏湖畔に到着。遊覧船に乗って湖を一周したが、紅葉の始まった湖畔の景色は美しかった。船に乗っている間ずっとテープのガイドがスピーカーから流れているのだが、これがなかなかの名調子で楽しめた。決して文学的に格調高い文章ではないのだが、支笏湖のことを真面目にかつ愛情をもって書かれたことが伺われる。
●昼メシは湖畔のレストランで支笏湖名物ヒメマスの生ちらし。昨日ほどごはんがぎゅうぎゅう詰めでなく気持ちよく食べられた。ヒメマスも生臭くなくほどよく脂がのって美味しかった。ここからは真っ直ぐ千歳に戻る予定だったが、思いのほか時間が余ったのでどこかに寄って行こうということになり、急遽地図をチェックした結果、千歳川の漁川ダムを見て行くことにした。
●国道453号線を着たに向かい、途中から道道に乗り換えて東に進んだが、なかなかダムが出てこない。しばらく行くうちに「白扇の滝」という駐車スペースがあったのでそこにクルマをとめて谷に降りて行くと、想像した以上に立派な滝があった。結構有名な滝らしく、レンタカー付属の地図には載っていなかったが、しかるべきガイドブックにはきちんと説明があるのだろう。カンで立ち寄った割りには「当たり」だったと思う。漁川ダムはそれからほどなく現れたが、コンクリート造りの圧巻という感じのダムではなく、かなりマイルドなダムだった。滝を見たおかげでほどよく時間も過ぎていたのでダムはさらっと立ち寄るだけにした。
●恵庭から千歳まで一区間だけ道央自動車道に乗り千歳空港近くのレンタカー営業所まで。ここでクルマを返し、ガソリン代を払った。走行距離450kmに対して消費したガソリンが32リットルほど。渋滞はなかったとはいえ山道も結構走ったにしては優秀な燃費である。精算を済ませ送迎バスで空港に着いたのは2時過ぎ。チェックインして土産を買い、待ち時間にビールを一杯飲んで3時半発の飛行機に乗り込んだ。
●羽田は雨。スーツケースを宅配便で自宅に送り、身軽になって京急線に乗った。夕方のラッシュアワーにあのスーツケースを持って満員の電車には乗りたくない。7時頃自宅に着いた。何といっても天気が悪かったのが残念だったけど、初めての北海道としてはまずまず満足のできる旅だったと思う。



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