■ ありふれた毎日
佐野元春の5年ぶりのアルバム「THE SUN」。9・11の大きなショックを出発点に、失われたもののかけがえのなさ、過ぎた時間の取り返しのつかなさに対する限りない悔恨を胸に沈めながら、その場所からありふれた毎日を肯定し、そこに寄り添い、その意味を問う傑作だ。
■ 呼応する現在
このサイトでは佐野の新しいアルバムがリリースされるたびに、僕の友達に声をかけ、原稿を提供してもらってレビュー特集を行ってきた。しかし、今回のアルバムに関しては、人の手を借りず、僕自身の言葉で、僕自身の思い、考えを書きたいという気持ちになった。それはこのアルバムが僕の現在と確実に呼応しているという強い確信が僕の中にあるからであり、それを僕は語りたい、語るべきだ、と思ったからだ。
■ 個人的な体験
音楽は個人的な体験だ。だからこの特集も必然的に僕の個人的な物語に過ぎない。しかし、佐野の音楽が何らかの普遍性を持つものなら、それに呼応する僕の個人的な物語もまたいくらかの一般的な価値を持ち得るはずだ。この特集が、僕と同じようにこのアルバムに感銘を受けた人に届くことを願いながら、僕は僕の中にあるこのアルバムの像を、何とか言葉の力ですくい取りたいと思っている。
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