logo 月夜と太陽のメロディー


ひそやかな月夜から始まり、太陽への祈りで終わる、アルバム「THE SUN」はそんなロマンチックで壮大なパースペクティブを持った作品だ。

「月夜を往け」で佐野は、月に照らされながら眠るパートナーをそっと見守る主人公を描く。それはとても静かなシーンだ。燃え上がるような激しい思いであるよりは、長い時間に試され、育まれた、静かで強い気持ち。闇の中で月の光に浮かび上がる彼女の寝顔に心を奪われ、二人が行くこの道を明るく照らしてくれるようにと月に祈る。軽やかなフォークロック調で歌われるこの曲の、しかしそこに秘められた決意は驚くほど強固なものだ。

アルバムの中盤に置かれたシングル曲「君の魂 大事な魂」でも太陽と月のことが歌われる。「そこに陽はまた昇り 月はまた巡り この世界は何も変わらない」と。デイジーの花をかき抱きながら、夜明けが来る前に行くのだと佐野は言う。僕たちは日の当たる場所へこぎ出すことをもう一度確かめる。月の光の中で誓った決意を、僕たちはどこまでも携えて行くのだ。「I love you」と繰り返しながら。同じリフレインを、佐野は歌詞を変えてもう一度歌う。「そこに陽はまた昇り 月はまた巡り この世界はいつも新しい」。ここに大きな転換点がある。

そして、「太陽」。生命の源である太陽に僕たちは再び祈る。ここにいる力をもっと。それはこの騒々しく、残酷な世界に踏みとどまって闘う僕たちに力を与えてくれということだ。気まぐれで、愛しい「あのひと」が無事にたどり着くべき場所をこの世界の片隅に確保するために。

ひとりひとりのリスナーが思い浮かべる「あのひと」はそれぞれ異なるだろう。しかし、月夜にその寝顔を見つめ、共に夜明けに海原へこぎ出し、太陽に祈るべきパートナーがいるのなら、このアルバムはきっと切実に、そして限りなく優しく響くだろう。



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