備えあれば憂いなし 北海道東部に霧多布(きりたっぷ)という所があります。親戚を尋ねて初めて行ったのは、私が小学生の時でした。親戚宅に着いてしばらくすると、叔父が私と妹を連れて外を案内してくれました。家の裏手を歩くとほどなくして岸壁があり、そこで叔父は1960年のチリ沖地震による津波の被害でこの町が壊滅的な打撃を受けたことと、その後二度と同じ被害を繰り返さずに済むようにと防潮堤が作られた話をしてくれました。 私が住む北海道太平洋側東部地方の沖合いは、地震列島日本の中にあっても特に地震の多い所で、まさに地震の巣です。昨年11月にも釧路沖を震源とするM7.1の地震があり、私も震度5強の揺れを体験しました。また、その時の余震が今でもあり、地震の恐怖と戦い続ける毎日が今尚続いています。 最近、昨年の中越地震やスマトラ島沖地震とその津波被害、そして阪神淡路大震災から10年の節目ということで、テレビ番組などで地震や津波について様々なシミュレーションをしたり、避難の際の問題提起などをしています。その中で気になったのは、特に大都市で大地震が起きた場合、多くの帰宅困難者が出るであろうということでした。私のように地方に住んでいても、たまたま旅先で地震に遭うかもしれません。東京などでは、大規模な商業施設やオフィスビルなどが、いざという時の避難先として非常用品を備蓄している所があるということを今回知りました。今後は旅行の際には、旅先で地震が起きた場合の避難先などを事前に調べるなどするのもいいかもしれないと思いました。 地震の怖さは、何といっても「いつ起きるかわからない」ということです。裏を返せば、「いつでも起きる」とも言えます。一生地震の被害に遭わずに済む人だってたくさんいるのでしょうが、それが誰なのか、自分はどうなのかはわかりません。となれば、やはり何かしらの備えはしておいた方がいいということです。 まず最初にして欲しいことは、自分の居場所について把握することです。自分の家は木造か鉄筋か、一戸建てか集合住宅か、築何年なのか、また地盤の良し悪しや地形、海や川からの距離、標高などの諸条件によって、同じ地震や津波が起きても被害状況が違ってくるので、避難の必要性も違ってきます。例えば低層の鉄筋コンクリートの比較的新しいマンションなどに住んでいて総合的に安全性が高ければ、むやみに外に出ない方が安全なはずですし、古い木造住宅であれば、すぐにでも外に出た方がいいということもあります。つまり個々人が自分の住環境を把握し、どういった災害でどういう危険があるかということを理解すれば、自ずと判断も違ってくるはずです。また室内、特に寝室の家具の配置などもより安全にするなど、すぐにでも改善できることもたくさんあると思います。 地震や津波という予測不能な天災では、残念ながらどうしても逃げられないということもあり、必ずしも「備えあれば憂いなし」とはいきません。しかし、ちょっとした意識の違いで助かるかどうかということもあるはずです。その意識とは「地震はいつでも起きる」という認識です。 2005 Sophie / Silverboy & Co. e-Mail address : silverboy@silverboy.com |