少年の夢と涙 今年の夏は、プロ野球のファンにとっては「闘いの夏」となりました。理由は説明するまでもなく、近鉄とオリックスの合併問題に始まった一連の騒動です。 まず一部報道、あるいは一定の立場の方がよく言われることに、「球団の赤字の原因は選手にも大いにあるのに、それを棚に上げて『合併するな』とは何事か。そんなことを言うくらいなら、年俸を下げてくれと言え。」といった趣旨の発言があります。億単位の年俸をもらっている選手もいるので、一般の方から見ると至極当然のようにも聞こえるかもしれませんが、この発言を鵜呑みにはして頂きたくないのです。 一部選手の年俸が高いのは事実です。しかし身体を張って、しかも十数年間という短い期間の中で、更に数年間活躍した時に多額の年俸をもらえるという選手がほとんどです。個人的な意見としては、「基本的に」高過ぎるとは思いません。 日本でプロ野球の選手の多くは、決して恵まれた環境にある訳ではありません。恵まれて見える選手はごく一部の限られた選手だけです。今回の問題、その点だけは誤解をして頂きたくないと思うのです。 そしてもうひとつ、一般の方から見て人気がないと思われる球団について話をさせて下さい。 千葉で署名活動をしている方が、あるお母さんから聞いた話です。 ------------------------------------------------- 署名活動中、千葉マリンで顔見知りの、小学生の男の子を持つお母さんに訴えられました。ちょっと話をきいてくれ、そして頑張ってくれって。 「ウチの息子、泣きながら"合併反対"のボード、作ってたのよ、昨日の夜。マリーンズどうなっちゃうのって聞くのよ、マリーンズ大好きだって、無くなったらどうしよう、どうしようって…それで、もう遅いから寝なさいって言ってもききやしないのよ。ぽっろぽろ、ぽっろぼろ、涙ぽたぽた落としながら、『合併反対』のボード、塗っているのよ…」 千葉のマリーンズファンの小学生の男の子。応援してきて、いいめなんか見た事無い。最大のイベントは18連敗(苦笑)。でも 「大きくなったら僕、野球選手になる! それでマリーンズはいって、僕がマリーンズを強くするんだ!」 って頑張ってる。絶対にマリーンズを優勝させてやるんだ、とか言っている(^^) ------------------------------------------------- 私は、これを読んで泣きましたよ。この子がどんな気持ちでそのボードを作っているかを考えたら、もう… −中略− 子供に夢を与える商売なのに、夢を奪ってはいけませんよ… 私もこの話を見た時は、恥ずかしながら涙が止まりませんでした。この子の気持ちを考えると、大人として自分はこれでいいのか、もっとするべきことがあるのではないかと思いましたし、この子の涙は私たちファンの涙でもあるのです。 球団には球団の経営があり、経営が行き詰まったから手放すことは仕方のないことだと思います。選手会も多くのファンも、別にいつまでも多額の赤字を抱えたまま球団を経営し続けろと言っているわけではありません。本来は近鉄が身売りをすればいいだけのことで、合併で球団を減らす前に、もっとできることはあるはずですし、その第一歩は話し合いだと思います。しかし、現状では球団の経営者サイドは、ファンはもちろんのこと、選手と話し合うことさえしようとしていないのです。選手もファンも多くはそのことに、一番憤りを感じているわけです。 プロ野球に限らず、現代社会に於いてスポーツというものは多くの人に夢を与えるからこそ存在意義もあるはずです。その夢をファンから奪うような今のプロ野球界の流れは、やはりファンとして見過ごすわけにはいきません。 2004 Sophie / Silverboy & Co. e-Mail address : silverboy@silverboy.com |