logo 役に立つドイツ旅行のポイント 言葉について


●言葉の問題は、やり始めるときりがありませんが、今回は旅行の局面で知っておくべきことを中心にご説明いたしましょう。細かい語彙、場面別の例文なんかは、本屋さんで「ドイツ語旅行会話集」とかいった類の本を買って参照して下さい。こういう本って結局あんまり役に立たなかったりもしますが、ま、精神衛生上一定の役割は果たすでしょうし、巻末の「ドイツ語メニューの読み方」や「ミニ単語集」が意外と重宝したりします。重いものじゃないので1冊持って行って損はしません。辞書用の薄い紙で製本してあったりすると、飛びこんだトイレに紙がなかったときの備えにもなって便利です。

●さて、まず、よく訊かれるのは、「ドイツでは英語は通じますか」ということです。一般的に言ってドイツでは英語は通じます。少なくともきちんとした教育を受けている一定以下の年齢の人は大変まともな英語を話します。イギリス人なんかよりよっぽどきれいな英語です。彼らは学校で必修科目として英語教育を受けており、むしろ英語を話してみたくてウズウズしています。こっちがドイツ語で話しても英語で答えるくらいです。特に大都市や観光地では英語は通じると考えておいてまず間違いありません。行き先の決まったパック旅行などでは問題ないでしょう。

●でも、少しばかり例外もあります。ひとつは外国からの移民です。特に近東方面からの移民の中には英語のできない人が結構います。困るのは、タクシーの運転手やファースト・フードの店員などにこうした人が少なからずいることです。到着して最初に乗ったタクシーの運転手がいきなり英語も話せないと、旅行者としては不安になっちゃったりするでしょう。そういうときは「ああ、はずれ引いちゃったんだなあ」と軽く割り切って下さい。行き先くらいは何とか伝わるでしょう。ホテルに着けば英語は通じます、たぶん。

●あと、ご年配の方の中には、英語のできない方が多いので注意。特にふだんあんまり観光客の来ない田舎の方に行ったりするとまったく通じないことがあります。道を訊いたり何か教えてもらうときは、なるべく若い人にした方が堅いと思います。おばあちゃんしかいないときはしかたがないので身ぶり手ぶり筆談パントマイム他使えるものは全部使ってコミュニケートして下さい。ま、それも旅行の醍醐味です。中に偏屈ババアや頑固ジジイもいますが、そういうときは「ああ、いいものを見た。さすがゲルマン魂」と割り切って下さい。彼らはシャイなだけなのです。

●次にいよいよドイツ語の世界に入ります。まず、これはドイツに限った話ではありませんが、海外に出かけるのなら、少なくともその国のあいさつ程度は覚えて行くべきです。いや、もちろん、別に覚えなくたって用は足りるけど、やはり旅行先での買い物とはいえ人と人とのコミュニケーションなんだから、ちょっとでも気持ちよく通じ合った方がいいでしょ? 本体の会話は英語でやらざるを得ないとしても、導入のあいさつをドイツ語でやっておくだけで相手の印象も違うし、その後の応対も微妙に(あるいはあからさまに)変わったりします。こっちのいい加減な英語を熱心に聞いてもらうためにも、取りあえずドイツ語のあいさつから入ってみることを是非お勧めします。

●で、あいさつですが、「おはよう」と「こんにちは」は問題ないですね? ドイツ人は寛容ですから、こっちがベタベタの日本語発音で「グーテン・モーゲン」とか「グーテン・ターク」とか言っても十分通じます。ポイントは元気よく大きな声で言うことです。大きな声であいさつされてイヤな気分になるのは二日酔いの人だけです。よりプロっぽく行きたいなら、「グーテン」の部分は口の中で押しつぶして「グン・モーゲン」とか「グン・タッ」みたいな感じでやると雰囲気が出ますが、旅行者なんだから日本語発音で十分です。「こんばんは」は「グーテン・アーベント」、これは「グン・ナーベン」って感じですね。

●「さようなら」は「アウフ・ヴィーダーゼーエン」ですが、これをきちんとやろうとすると結構きついです。この際「アウフ」は取ってしまいましょう。「ヴィーダーゼーエン」も長いので、「ヴィダズン」程度でいいです。十分通じます。これなら覚えられますね。何? これでもダメ? そういうときはしかたがないので、にっこりして「チュース」と言っておきましょう。これは本当は若い人たちが仲間の間で使う「じゃあね」みたいなあいさつですが、かなり一般化しているので、特に気むずかしそうな人以外になら使っても差し支えはないでしょう。余談ですが、僕はいまだにイタリアで「アリベデルチ」がとっさに出てきません。いっつも「チャオ」ですませていますがこれでいいのでしょうか。

●「ありがとう」は「ダンケ」です。ていねいになると「ダンケ・シェン」とか「ダンケ・ゼア」になります。「フィーレン・ダンク」というのもありです。お礼を言いすぎて損をすることはまずありませんから気前よく連発しておきましょう。ウェイトレスが料理を持ってきてくれたら「ダンケ」、レジでお釣りをもらったら「ダンケ」、バスを降りるときに「ダンケ」、トイレ番のおばちゃんに「ダンケ」、迷ったときは「ダンケ」と言っておいてまず間違いありません。但し足を踏まれて「ダンケ」と言うとさすがに訝られますから注意して下さい。

●「ごめんなさい」は覚える必要はありません。ドイツでは日常的な局面で謝罪することはあまりないからです。人混みで肩が触れたり足を踏んじゃったりしたときはごく軽く「シュディグン」と言っておきましょう。会話集には「エントシュルディグング」と載っているヤツです。知らない人に話しかけるときは「ハロー」で十分です。万一、不幸にしてとんでもない事態を引き起こしてしまい、心から謝らなければならないときは、どっちみちドイツ語どころではなくなっていますから心配しなくても大丈夫です。

●他に、「お願いします」の「ビッテ」、「はい/いいえ」の「ヤー/ナイン」あたりは覚えておいて損はないでしょう。それから使いでがあるのは、レストランで食事をして勘定を頼むときの「ツァーレン・ビッテ」。ドイツではカフェやレストランの類は原則としてみんなテーブル・チェックですから、ウェイターを呼び止めて「お勘定お願い」と頼み、計算書を持ってきてもらいます。このときの決まり文句が「ツァーレン・ビッテ」です。フランス語だと「ラディシオン・シル・ヴ・プレ」、イタリア語だと「イル・コント・ペル・ファヴォーレ」ですね。尚、ウェイターを呼び止めるときには「ヘル・オーバー」と呼べとか、(ウェイトレスの場合は)「フロイライン」と呼べとか書いてある本もあるかもしれませんが、そんなふうに呼ぶ人を僕は見たことがありません。「ハロー」で結構です。

●それから、トイレの男女の区別ですが、男性用には「H」、女性用には「D」と書いてあります。それぞれ「ヘレン」「ダーメン」の略です。絵記号で分かるようにしてあればいいですが、文字しか書かれていないことも結構ありますから気をつけて下さい。忘れてしまったときは思い切りあるのみです。確率は2分の1です。

●ドイツ語の発音は若干の例外を除いて簡単です。だいたいローマ字読みですからそのまま読めばほぼ通じます。例外の方は会話集の巻末か巻頭に載っていますからよく勉強して下さい。表記と発音の関係についてはフランス語よりも楽なハズです。ときおり母音字(A、U、O)の上にチョンチョンがついているときがありますが、旅行者がこれを気にすることはありません。在住者でもチョンチョンを無視して読んでいる人がたまにいますが通じています(たぶん)。あと、ギリシャ文字の「ベータ」みたいなヤツ、これは最近使わないことに決まりました。見かけたら「おまえらまだこんなもの使っているのか」と鼻で笑って構いません(実験して結果を教えて下さい)。ちなみに読みは「S」と同じと思って大丈夫です。

●ドイツ語はタフな言語です。大学の第2外国語に選んで挫折した苦い経験を持つ人も多いことでしょう。何を隠そう僕もそうでした。でも、入り口の取っつきにくさを克服すれば、大変論理的かつ構造的にできているので、長い文章でもミステリーを解くように構造が見えてきます。論理的思考に向いた言語です。発音も英語やフランス語に比べると日本人にはなじみやすいハズです。ま、ドイツ以外ではスイス、オーストリアで使えるくらいで、他にあまり使い道もないし、フランス語、イタリア語に比べるとおしゃれさにも欠けますが。では、がんばって予習して下さい。

●あ、そうそう、どうしても相手を激しくののしる必要があるときは、ま、いろいろありますが、僕なら「アシュロッホ」かな。捨てぜりふ的に使います。ま、日常の局面では口にしない方がいいでしょうね。使ってみた人は結果を教えて下さい。ケンカになっても責任は持ちかねますが。



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