logo ウォー・ゲーム


1992年にちくま文庫から刊行された短編集で、1952年から1959年までに発表された初期の短編を10編収録している。収録作品はすべて仁賀克雄の選、訳によるものである。また、1985年に同じタイトルの短編集が朝日ソノラマ文庫から刊行されているが、「ドアの向こうで」「萎びたリンゴ」「ウォー・ゲーム」の3編が共通するのみで、他の収録作品は異なっている。朝日ソノラマ文庫版のその他の収録作品はすべてここで紹介する他の短編集に収められており、同版でしか読めない作品はないため紹介はしない(ていうか持ってないし)。

 

The Gun 自動砲 1952 仁賀克雄・訳

核戦争で滅亡したと思われる惑星を見つけた宇宙艇。着陸すべきかどうかを議論するまもなく、宇宙艇は対空砲の攻撃を受け不時着を余儀なくされた。着陸した彼らが地上を調査すると、そこには完全に自動化された対空砲が。彼らはこの星を離れるときに攻撃を受けることを危惧し、その自動砲を破壊する。だが彼らが立ち去ると地下に隠された自動工場システムが動き出し、砲の修理を始めるのだった。機械が自己保存の能力を獲得し自己補修するアイデアは「変種第二号」や「Vulcan's Hammer」の先駆けとなるものだ。
 

Great C 偉大なる神 1953 仁賀克雄・訳

核戦争により文明は破局を迎え、わずかに生き残った人類は退化した部族社会を築いていた。メレディスの属する部族では、毎年ひとりの若者が、三つの問題を携えてスーパー・コンピュータである「グレートC」を訪れることになっていた。さもなければグレートCは世界を滅亡させた戦争を再び起こすというのだ。だが、グレートCがその問題を解けば、使者として送りこまれた若者は戻らない。グレートCは今や、人間の身体をその活動力の源にしているのだ。これも「Vulcan's Hammer」を思い起こさせる。
 

Beyond The Door ドアの向うで 1954 仁賀克雄・訳

ラリーはあるとき、妻のためにカッコウ時計を買ってきた。15分ごとにカッコウが出てきては時を告げるのだ。妻はその時計が気に入ったがラリーには気に入らない。カッコウもラリーを嫌い、時間になっても出てこなかったりする。ある時ラリーは、時間になっても姿を現さないカッコウに怒り、時計を壊そうとする。その時、すごい勢いでカッコウが時計から飛び出してきた。目を狙われバランスを崩したラリーは椅子から落ちて…。「レダと白鳥」と似た主題の作品だが、物語としての奥行きには欠ける感がする。
 

A Present For Pat パットへの贈り物 1954 仁賀克雄・訳

エリック・ブレイクはガニメデ出張の土産に現地人から「神様」を買って帰ってきた。神様は10インチくらいの小さな像で相応の超常能力は持っているが怒りっぽく、エリックの友人をカエルに変えたり妻を石に変えたりしてしまう。そのせいでエリックは職を失い、さらに大がかりな事態に…。神様が探していた疫病神が実はエリックの上司で、最後は神同士の争いになるという結末は何だか「宇宙の操り人形」とか「銀河の壺直し」を思い起こさせる。そんなアホな、と言いながらスラップスティックとして楽しむべき作品。
 

Prominent Author 有名作家 1954 仁賀克雄・訳

任意の二点間を結んで一瞬のうちに空間移動をなしとげる「ジフィ・スカットラー」。だがそのトンネルは時空の歪みにつながっていた。トンネルの途中で異次元の人類と出会ったエリスは彼らの質問に答えるが、そこは実は古代のヘブライだった。エリスの質疑応答は古代ヘブライの住民に書きとめられ、聖典として受け継がれたのだ。そう、聖書として。ジフィ・スカットラーは「The Crack In Space」にも出てくる空間移動機。まあ、どこでもドアみたいなものだと思えばいいだろう。無理はあるがアイデア勝負の作品。
 

Of Withered Apples 萎びたリンゴ 1954 仁賀克雄・訳

都会から田舎に嫁いできたロリは、夫と義父が農場経営にしか興味がないのにうんざりしている。彼女のもとに、丘の上の放棄された古い果樹園に植えられたリンゴの木から使いがやって来る。彼女がリンゴの木の何に惹かれているかは明らかにされない。だが、彼女はその木から落ちた萎びたリンゴをかじり、盲腸炎で死んでしまう。一方でリンゴの木は季節外れの実を赤々と実らせるのだった。ブラッドベリ的な幻想譚であり、原題が「萎びたリンゴの…」となっているのが、何か超越的なものの存在を示唆しているのでは。
 

Souvenir スーヴェニール 1954 仁賀克雄・訳

ロジャースが発見したのは何世紀も前に宇宙船で旅立ったきり消息を絶ったウイリアムスンが建設した植民星だった。その星では敢えて文明の進歩を嫌い、牧歌的な田園生活を営んでいた。だが銀河系社会に加わるようにとの通告にウイリアムスンの星は従わない。全植民星の画一的な発展と中央による統制を基本原理とする銀河系文明社会は彼らの星を破壊してしまう。歴史は単線的に発展し、すべての文明はその発展段階のいずれかの地点に位置づけられるという西洋的な発展史観に疑問を呈したとも読める作品だ。
 

Jon's World ジョンの世界 1954 仁賀克雄・訳

ライアンは完成したばかりのタイムマシンで過去に出かける。人工知能による自動兵器クロウの出現で人間は激減し、今は人工知能の技術も失われてしまった。それを過去からもう一度取り戻すのだ。「12モンキーズ」とか「ターミネーター」の世界である。クロウは「変種第二号」を思い起こさせ、その続編と考えてもいいだろう。そしてライアンの子供であるジョンは過去の改変によって変わるもう一つの現在を見ている。この辺は「火星のタイムスリップ」の原型。ジョンの幻視の伏線がうまく回収されないのが残念。
 

Explorers We 探検隊はおれたちだ 1959 仁賀克雄・訳

火星探検から地球に戻った六人乗りの宇宙船。久しぶりに地面に降り立った彼らは街を目指すが、出会った人はみな彼らを見ると逃げ出す。やがて彼らは駆けつけたFBIに焼き殺されてしまう。実際には探検隊は火星で全滅し、何者かが本物とそっくり同じニセの探検隊を何度も繰り返し地球に送って寄越してくるのだった。宇宙船の側から書き起こしているので謎解きに意外感があって面白い。繰り返し送りこまれる探検隊の複製がいったいだれのどういう意図によるものかは明かされない。そしてまた次の探検隊が帰還する。
 

War Game ウォー・ゲーム 1959 仁賀克雄・訳

ガニメデから輸入される大量のおもちゃ。だがガニメデは地球への攻撃を企図しており、おもちゃの中に何らかの攻撃的意図が隠されているかもしれない、何しろガニメデ人は発明の才に富んでいるのだ。輸入基準局ではそれらのおもちゃを審査していたが、それらに秘められた意図を計りかねていた。兵士が城塞に突撃するおもちゃ、幻覚作用のあるカウボーイ・スーツ、そして持ち物を放棄したものが勝つモノポリー。ガニメデ人が地球侵略のために仕掛けた罠はいったいどれなのか。思わせぶりだが結末はあっけない。



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