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免許交付、保険証も確認…警察庁がなりすまし防止対策 (読売新聞 2007年2月9日)

住民票を勝手に取得し、知的障害者になりすました男が運転免許証を不正取得していた事件に絡み、警察庁は8日、免許証取得の申請者に、住民票だけでなく、パスポートなどの提示を求めるよう全国の警察本部に指示する方針を決めた。

現行の道交法施行規則では、免許証取得の際、住民票の写しの添付が必要と規定されているが、これ以外の身分証などは必要とされておらず、神奈川県警が摘発した犯行グループはこれを悪用して免許証を不正取得していた。警視庁では、住民票のほかにパスポートや健康保険証などの提示を求めているが、ほかの警察本部では実施されておらず、警察庁は、警視庁方式の採用が必要と判断した。


三田市の住基カード不正取得で滋賀の女を逮捕 (朝日新聞 2007年2月9日)

不正取得された住民基本台帳カード(住基カード)をもとに、兵庫県三田市の女性の銀行口座が勝手に解約され約55万円が引き出された事件で、女性になりすまして虚偽の住民票転出届や転入届を出したとして、兵庫県警は8日、滋賀県近江八幡市末広町の飲食店員、大野木美友子容疑者(46)を電磁的公正証書原本不実記録・同供用と有印私文書偽造・同行使の疑いで逮捕した。

県警組織犯罪対策課の調べでは、大野木容疑者は06年10月25日、三田市役所で、女性になりすまし、転出届を偽造して職員に提出。その後、大阪市天王寺区役所で偽造した転入届を提出し、両市の住民基本台帳ファイルに事実と異なる内容の記録をさせた疑い。この手続きをもとに女性の住基カードを不正取得したという。


ふむふむ。確かに住民票だけで免許証ができてしまうんじゃ、本人確認資料としての免許証の地位も危うい。本人確認といえば「運転免許証はありますか」と訊かれるのが当たり前になってしまった社会で、その免許証が他人の住民票でも作れてしまうのなら、その本人確認は何なのよ、ってことになってしまう。

じゃ、免許証を作るためにパスポートを持って行くとして、パスポートはどうやれば作れるのか。外務省のサイトに必要書類が示されている。これによれば、申請書、戸籍謄本、住民票などの他に「申請者本人に間違いないことを確認できる書類」が要求されており、その筆頭に挙げられているのが運転免許証…。

朝日新聞の記事に載っている住民基本台帳カードというものもある。役所が発行する写真入りのカードで、運転免許証を持っていない人でも持つことのできる公的な本人確認資料というふれこみなのだが、これを取得するために必要な書類を例えば千代田区のサイトで確認してみよう。「本人確認できる書類(運転免許証やパスポート、健康保険証など)が必要です」。うん、何かそんな気はしたよ。

実は最初に挙げた読売新聞の記事にはこんな続きがある。

この「なりすまし」事件について、菅総務相は8日、「障害者を狙った悪質な行為であり許せない」と話し、相次ぐ住民票の「なりすまし請求」を防止するため、本人確認を義務づける住民基本台帳法の改正案を3月に国会に提出することを明らかにした。

改正案は、住民票の写しの交付に関して、基本的にだれでも請求できる現行制度を改めるもので、菅総務相は「個人情報の保護を徹底し、不正な請求をなくしたい」と述べた。

じゃ、住民票を取るには何が必要か。千代田区には申し訳ないがもう一度登場してもらおう。「請求の際には、来庁者が本人であることを確認できるもの(運転免許証や健康保険証などの公的機関が発行したものなど)をお持ちください」。ほらね。こんな現状の上に「本人確認を義務づける」といったって、やることといえばどうせ免許証かパスポートを必ず持ってこいということくらいなんじゃないのかなあ。

これは星新一のショートショートでもP.K.ディックの描く悪夢のような世界の話でもない。僕たちの住むこの日本でごく当たり前に毎日繰り返されている果てしない本人確認合戦の、最も基本になる書類を取得するための手続に他ならない。いったいだれが最初に責任を持って「その人がその人に間違いないこと」を確認するのか。残念ながら我が国の公的システムにはそのための仕組みはないという他ないのだ。

せっかく住基カードを作ったのだから、公的な本人認証システムまで本当はあと一歩のはず。こんな本人確認の堂々巡りはそろそろ何とかした方がいいと思う。



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