本人確認
ふむふむ。確かに住民票だけで免許証ができてしまうんじゃ、本人確認資料としての免許証の地位も危うい。本人確認といえば「運転免許証はありますか」と訊かれるのが当たり前になってしまった社会で、その免許証が他人の住民票でも作れてしまうのなら、その本人確認は何なのよ、ってことになってしまう。 じゃ、免許証を作るためにパスポートを持って行くとして、パスポートはどうやれば作れるのか。外務省のサイトに必要書類が示されている。これによれば、申請書、戸籍謄本、住民票などの他に「申請者本人に間違いないことを確認できる書類」が要求されており、その筆頭に挙げられているのが運転免許証…。 朝日新聞の記事に載っている住民基本台帳カードというものもある。役所が発行する写真入りのカードで、運転免許証を持っていない人でも持つことのできる公的な本人確認資料というふれこみなのだが、これを取得するために必要な書類を例えば千代田区のサイトで確認してみよう。「本人確認できる書類(運転免許証やパスポート、健康保険証など)が必要です」。うん、何かそんな気はしたよ。 実は最初に挙げた読売新聞の記事にはこんな続きがある。
じゃ、住民票を取るには何が必要か。千代田区には申し訳ないがもう一度登場してもらおう。「請求の際には、来庁者が本人であることを確認できるもの(運転免許証や健康保険証などの公的機関が発行したものなど)をお持ちください」。ほらね。こんな現状の上に「本人確認を義務づける」といったって、やることといえばどうせ免許証かパスポートを必ず持ってこいということくらいなんじゃないのかなあ。 これは星新一のショートショートでもP.K.ディックの描く悪夢のような世界の話でもない。僕たちの住むこの日本でごく当たり前に毎日繰り返されている果てしない本人確認合戦の、最も基本になる書類を取得するための手続に他ならない。いったいだれが最初に責任を持って「その人がその人に間違いないこと」を確認するのか。残念ながら我が国の公的システムにはそのための仕組みはないという他ないのだ。 せっかく住基カードを作ったのだから、公的な本人認証システムまで本当はあと一歩のはず。こんな本人確認の堂々巡りはそろそろ何とかした方がいいと思う。 2007 Silverboy & Co. e-Mail address : silverboy@silverboy.com |