logo 女の武器


もういい加減この人のことを書くのはやめようと思っているのだが、ネタとして面白いのでつい書いてしまう。これで終わりにできればいいんだけど。いや、他ならぬマキコ「前」大臣の話だけどさ。

マキコ「前」大臣がまだ現役の大臣だった頃、発言に外務省の事務方と食い違いがある問題で党の幹部と話し合い、その後記者団に「役所が言っていることが正しくて、国会議員の言っていることは正しくないんですか」と目に涙をためて話したという。それについて感想を求められたコイズミが「涙は女性の最大の武器というからね」と発言したというのがことの発端だ。

まず僕はこのサイトの女性読者に訊いてみたいのだが、この発言を聞いてあなたはどう思いましたか。「とんでもない、女性蔑視だわよ、許せない」と思ったか、あるいは「ま、確かにそういう面もあるわね」と思ったか、その辺の率直な感想を伺いたいと。

僕自身はどちらかといえば涙もろい方だと思うが、少なくとも職場で仕事がうまく行かないからと泣いたことは一度もない。そんな男の同僚も見たことがない。一方で、仕事でチョンボをかましたり上司に強く叱責されたりして泣き出す(あるいは便所に駆けこんで泣く)女の同僚は何人か知っている。

泣くのが悪い、泣かないのがエラいと言っている訳ではもちろんない。上司に叱られてオイオイ声を上げて泣く男性社員だってどこかにいるだろうし、人前で涙なんか見せないという女性もたくさんいるだろう。だけど、もし仮に外務大臣が男性で、その言い分が通らないからと国対委員長との会談や他国との交渉のたびに涙を浮かべたりしたら、いったいどんな反応が返ってくるだろう。

男だって悔しかったら泣けばいいのだ、という考えもあるだろう。僕も泣くことで仕事が片づくのならいくらでも泣いてみようと思う。だが、職業人として自分の言い分が通らないときにするべきことは少なくとも泣くことではない。一国の外交を担うべき外務大臣であればなおさらそうだ。マキコ「前」大臣が公の場で涙ぐんだことが職務不適格として問題にされずむしろ同情を買ったのはまさに彼女が女性だったからという要素も多分にあるのであり、その意味で「涙は女の武器」に他ならなかったのではないか。

いや、デリケートな問題なので僕もビクビクしながら書いてるんだけど、問題なのは「涙は女の武器」だというコイズミの発言より、むしろ人前で涙ぐんだマキコ「前」大臣の自己コントロールの方ではないのか。マキコ「前」大臣が意図的に泣き落としをかけたとは僕は思わないが、感情をコントロールできずに「それみろ、涙は女の武器じゃないか、所詮女は感情の生き物じゃないか」なんて旧態依然とした揚げ足取りのスキをタヌキ親父どもに与えたマキコ「前」大臣の方こそ、女性蔑視を助長する「女性の敵」として本当は指弾されなければならないのではないのか。

男女は平等でなければならないと言うのなら、国政の切羽詰まった場面で不覚にも涙を浮かべてしまったマキコ「前」大臣こそが、まず要職にある者としての適格性の観点から男性閣僚と同じように痛烈に批判されなければならない。それを見逃し、許してしまった人たちが「涙は女の武器」発言を批判するのは順番がおかしくはないですか。



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