視聴者の声 サッカーのヨーロッパ・チャンピオンズリーグ決勝は、ドイツのバイエルン・ミュンヘンとスペインのバレンシアの間で行われた。優勝したのは結局バイエルンだったんだけど、試合はパッとしない展開のまま互いにPKで取った得点を守って1-1で延長に入り、延長でも決着がつかないでついにPK戦となり、PKも5人ずつじゃ決まらなくてサドンデスになってようやく7人目で決まるというダルさ。決着がついたのは午後11時をとっくに回った頃だったのだが、そのころ日本で何が起こっていたかというと…。 日本ではこの試合、衛星のWOWOWと地上波のTBSが生中継していた。WOWOWは有料放送でありサッカーはそのメイン・コンテンツの一つだから延長になろうがPKになろうが最後まで中継するのが当たり前として、TBSはあろうことか延長の途中で放送を打ち切ってしまったらしい。ははは。結果として例えばYAHOO!の海外サッカーの掲示板なんかではTBSに抗議のメールを出そうなんていう議論が盛り上がっている訳だ。いや、もちろん既に抗議のメールを送ってしまった人もたくさんいるんだろうけど。 でも、そこに出てきたのが「ちょっと待て」という意見。所詮無料でTBS見てんだから途中で放送打ち切られたからってガタガタ言うのは筋が違うんじゃないか、そんなに最後まで見たいんならちゃんとカネを払ってWOWOWに加入すればいいじゃないか、と。う〜ん、正論だよな。まあ、民放なんてカネ出してんのはスポンサーなんだし、視聴者というのはいわばその恩恵を受けているただの一方的な受益者に過ぎない訳だから、そこには放送局に文句をつける正当性というか権原というか論理的基盤みたいなものが欠けている。それは確かなことだ。 だけど、視聴者が放送局の理不尽な放送打ち切りに黙って耐えなければならないという決まりはない。いや、むしろ視聴者は、一方的な受益者だからこそ「無責任」に声を上げるべきなのだ。確かにオレたちは文句を言えた筋合いじゃないかもしれないが、こんなサッカー中継ならもう見ないし、スポンサーのイメージだって悪くなっちゃうよ、と。いや、夜中のサッカー中継なんて視聴率的にもたかがしれてるのにそれでガタガタ言うんならもう中継なんてやめちまうぞと放送局が考えるリスクはもちろん十分あり得るとしての話だけどね。だって視聴者の意見なんてもともとその程度のはかないものなんだから。 ともかく、そうやって声を上げて行かないことには日本のサッカー中継のレベルなんて上がるはずもないだろう。チャンピオンズリーグの中継を延長の途中で切られて怒るファンもたくさんいるんだということはヤツらに知らせておかなければならないし、それは長い目で見れば日本のサッカー中継のレベルを上げるのみならず、サッカーというスポーツの地位を上げることにも貢献するはずだ。生放送は衛星に任せて民放はゴールデンタイムの要領のいいダイジェストに徹するとか、そういう工夫も生まれてくる余地があるだろう。 僕自身としてはテレビなんて見なくたってどうってことないと思うし、サッカーの試合を途中で切られたらそりゃむかつくのは分かるがそれだけの話だと思う。でも受信料無料の民放でレベルの高い世界のサッカーを見られるということは、視聴者にとってたとえそれが一方的な恩恵に過ぎないとしても決して悪いことではないし、その中継のやり方を洗練して行くためには視聴者の声も必要なんだろうなと思うので、ここは皆さん、やはりTBSに抗議しておいてはいかがかと。 2001 Silverboy & Co. e-Mail address : silverboy@silverboy.com |