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Jリーグの福岡が、カップ戦をベスト・メンバーで戦わなかったという理由でリーグから追及を受けているという。確かに福岡は4月12日のカップ戦で直前のリーグ戦から10人、15日のカップ戦では同じく8人を入れ替えて戦った。福岡がベスト・メンバーと呼べる選手を2チーム分抱えているとも思えないから、カップ戦を軽視した格落ちのチームで戦ったとか、相手をバカにした行為でフェアプレーの精神に欠けるとかいう批判があるのも分からないではない。

しかし、リーグも認める通り、「ベスト・メンバー」の定義は難しい。それは試合日程や個々の選手のコンディション、控え選手の育成方針とも関係する極めて技術的、流動的なもので、それを見極めるためにこそ監督がいるのだ。「ベスト・メンバーで戦うべし」というのはまあ「わざと負けてはいけない、八百長をしてはいけない」というようなニュアンスの訓示規定ではないのか。それに何より福岡はこれらの試合にアウェイで3対2、ホームで0対0と結果を出している。

僕の住んでいるドイツでも、リーグ戦とカップ戦が並行して行われている。昨年行われたカップの序盤戦で、1部リーグの優勝候補レバークーゼンは主力をはずした「Bチーム」で試合に臨み、2部リーグのマンハイムに負けてしまった。当然、レバークーゼンはカップ戦を軽視している、悲願のリーグ優勝のためにカップ戦からは早々に撤退したがっているという批判を受けたが、監督は「選手のコンディションから見てもベストのチームだった」と取り合わなかった。

実際、この時期のレバークーゼンは、週末にレギュラーのリーグ戦、他のチームが休んでいる週央にはヨーロッパの強豪チームどうしがクラブ・チームのナンバー・ワンを競うチャンピオンズ・リーグの試合があり、チームにはかなりの負荷がかかっていた。マンハイムに負けたのは誤算だったにせよ、いくつかの異なる目標を同時に追求する上で、試合毎に相手を見ながら持ち駒を繰り回すのは監督として当たり前のことだと監督のクリストフ・ダウムは思っていたに違いない。

昨年のリーグ覇者バイエルン・ミュンヘンは、チャンピオンズ・リーグの2次リーグ最終戦の遠征に、主力選手の多くを同行させなかった。ミュンヘンは既にその前の試合で2次リーグ突破を決めており、この試合はいわば消化試合で、しかも場所は極寒のキエフ(ウクライナだぜ、ウクライナ)、負けても構わない試合に貴重な主力は出せないという考えが見え見えのチーム編成だった。キャプテンのエフェンベルグも、ブラジル代表のエルバーも同行しなかった。

予想通りこのチームもダイナモ・キエフに負けてしまった。あんまりじゃないのという批判は当然あった。だがやはりキエフ遠征からはずれてミュンヘンの暖かい自宅でテレビ観戦したであろうゴール・キーパーのオリバー・カーン(ドイツ代表でもある)は言った。「目標は優勝だ。キエフくんだりまで出かけて怪我でもしたってだれも誉めてくれない。優勝に向けてあらゆることを組織するのがプロってもんだろ」。この試合でキーパーをつとめたのは21歳のシュテファン・ヴェセルズだった。

ベスト・メンバーを出さないと相手に失礼だというのは、勝つことよりベストを尽くすことの方が大事だというウェットな価値観に基づいたあまりにセンチメンタルな考え方だ。二線級のチームに文句があるならそのチームに勝てばいい。そうして初めてカップ戦軽視だの主力温存だのという批判は意味を持ち得るだろう。だが福岡はホーム&アウェイで湘南に勝った。結果的にそれがベスト・メンバーであったことの証明であるはずだ。

Jリーグもくだらないことを言ってるより、あの無意味な延長戦を早く廃止して、試合は週末だけにしよう。話はそれるが、どうしても勝たねばならない試合と、どうしても負けられない試合とでは戦い方が違う。W杯を展望するなら、引き分けを選択肢に入れた駆け引きができるようにならなければならないが、そのためにはあの延長戦は邪魔だ。星勘定と対戦相手から考えて、引き分けでいい試合と勝つべき試合のメリハリをつけて戦う。それもサッカーのうちじゃないの?



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