silverboy club presents disc review
my shopping bag october 1999




SUPERGRASS Supergrass

新手のハイプにしか見えなかったデビュー当時のことを考えると、本当に感無量なほどの成長を遂げた3枚目のアルバム。というか、「レニー」のインパクトに感動してファーストを買ってしまった僕としては、もともとはやはりきちんと音楽を聴いていた訳で、結局当時の「売られ方」の印象がこのバンドのイメージを逆に限定していたのかもしれない。むしろそのようなアイドル扱いをくぐり抜け、力づくで実力を認めさせてきた、その過程こそが成長と映るのだろう。

それにしてもこの1曲1曲の成熟のしかたはどうだ。ソングライティングは格段に向上し、複雑な構成の曲も易々と聞かせてしまうビートとグルーブ、抜群の安定感である。ロックン・ロールというどん詰まりのメディアをそれでも信頼し、奇をてらった新しさを追い求めるのではなく、そこにある表現の質をひたすら高めることによってその閉塞を突破して行こうとする意志と力。それはブリット・ポップ対応型のメロディへの目配りと相まって、ロックン・ロールの未来を指し示していると言っても過言ではない。

2000年を目前にして、ロック市場はますます多様化して細分化し、全体としては混迷している。それは巨大市場ではあるけれども、それを統一的に支配するパラダイムは消失し、本当の意味での大スターはもう現れないかもしれない。僕はそれを決して悪いことだとは思わないが、そうした場所でまともなロックン・ロールが鳴らし続けれられることの困難を思うとき、彼らのようなバンドがミレニアムを越えて闘い続けることに希望をつなぎたい。買って損なし。8点。


ONE FROM THE MODERN Ocean Colour Scene

何回も書いて申し訳ないが、僕はブラーの「テンダー」には本当に失望した。あんなものをブラーの新境地だと持ち上げる人の気が知れない。失恋で商売することの是非はおくとしても、その商売の仕方があまりに浅薄。仮にもデーモン・アルバーンなら、それを一世一代のポップ・チューンにして見せるくらいの踏ん張りはなかったのか。オマエの「泣き」をそのまま売りつけられるこっちの身にもなってみろよと僕は言いたい。そんなことだからみんなに嫌われるんだ、オマエは。

それに比べてOCSの「PROFIT IN PEACE」は天と地ほど違う。例えばNATO空爆の影響で自分の乗る飛行機が遅れたり、昨日まで遊んでいた仲間が今日は兵役でコソボ派遣だったり、そんな国際政治の現場としてのヨーロッパに暮らす者のリアルな意識が垣間みられて面白かったし、そこには「もう争いはたくさんだ」という祈りがあのような音楽と結びつくべき強い必然性が感じられた。その祈りには現実の国際政治をも動かし得る力がある。

ややメロウになった趣はあるものの、復活後のOCSが引き続き好調を維持していることを示す4枚目のアルバム。ロックン・ロールとR&Bをベースにグイグイ押してくる男気。特に「I AM THE NEWS」はザ・フーそのものだが今これができるのはこいつらしかないだろうというくらいのはまりようで文句のないカッコよさ。もちろんそれは労働者階級的なマッチョイズムと表裏一体でもある訳だが。カッコよけりゃいいじゃん。8点の松。


YELLOW SUBMARINE SONGTRACK The Beatles

映画「イエロー・サブマリン」で使用されたビートルズの曲をデジタル・リミックスで収録した本作は、これまでジョージ・マーチンのインストを片面に収録していた「サウンドトラック」とは異なる15曲入りの「ソングトラック」である。中期ビートルズの楽曲を幅広いアルバムから収録しているが、曲目はあくまで映画に沿っているので必ずしも代表曲や名曲ばかりではない。ま、それでも十分ベスト的に聴けるんだけど。

僕が好きなビートルズはもう圧倒的に中期である。「ラバー・ソウル」「リボルバー」からホワイト・アルバムまで、その間に発表した何枚かの才気走ったシングルや企画盤。音楽の至福というのはここにあるのだと断言できる。例えば「レイン」を聴いてみればいい。例えば「We Can Work It Out」を、「ペイパーバック・ライター」を聴いてみればいい。才能とは何か、力とは何か、そして音楽とは何かということがすべてそこに語られているから。

このアルバムではさすがに音像がくっきりと際立っているような印象を受ける。そして気がつくのは「ヘイ・ブルドッグ」ってカッコよかったんだ、とか、「イッツ・オール・トゥー・マッチ」って悪くないよね、ということ。入門編としては不親切だし、かといって新しい音源が入っている訳でもなく、本来はマニアのためのCDだと思う。もちろん採点対象外だが。ところで僕は映画の方は見たことないんだけど、それってモグリ?




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