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FAT POP
Paul Weller
★★★☆

Polydor (2021)
3556643

■ Cosmic Fringes
■ True
■ Fat Pop
■ Shade Of Blue
■ Glad Times
■ Cobweb / Connections
■ Testify
■ That Pleasure
■ Failed
■ Moving Canvas
■ In Better Times
■ Still Glides The Stream
前作からわずか1年のインターバルでリリースされたソロとしては15枚目のオリジナル・アルバム。プロデュースは前作と同じくヤン・スタン・カイバート。異例の速いペースでのリリースだが、コロナの影響でツアーができず、それならということでアルバムを作ってしまうことにしたらしい。作ろうと思えばいつでも作れるということか。それだったらどんどん作って出して欲しいが。還暦過ぎても創作意欲の衰えないジジイマジヤバい。

12曲中9曲が4分以内、6曲が3分以内というコンパクトなナンバーが40分弱の尺の中にギュッと詰めこまれており、今の通勤なら片道で聴けてしまうサイズ。どの曲も小難しい理屈をこねる前に「ほら、ここ、ここを聴いてくれよ」ってところにたどり着く直接性が潔く、短い時間に凝縮された熱量がブチ込まれていて腹にたまる。何だか小難しかったり妙に地味だったりいろんなアルバムがあったが、ここにきてのこのシンプルさは何だろう。

曲ごとにフックもありバラエティにも富んでいるが、アルバムを通じて分かるのはウェラーが自由に音楽を楽しんでいること。全体をひとつにまとめるようなことさらのコンセプトは見当たらないが、ポール・ウェラーの新しいアルバムというのはいつもこんな感じだったなという振幅と奥行きが見られ、こういうのを2年に1枚くらい出してくれればそれでもう言うことないという作品。ウェラーの底流にあるソウルへの憧憬がまぶしい一枚。




ENDLESS ARCADE
Teenage Fanclub
★★★☆

Pema (2021)
PCD-25317

■ Home
■ Endless Arcade
■ Warm Embrace
■ Everything Is Falling Apart
■ The Sun Won't Shine On Me
■ Come With Me
■ In Our Dreams
■ I'm More Inclined
■ Back In The Day
■ The Future
■ Living With You
■ Silent Song
前作から5年のインターバルでリリースされた(数え方にもよるが)10枚めのオリジナル・アルバム。前作リリース後の2018年に、結成以来のメンバーで3人のソングライターの一人であったジェラルド・ラブがバンドを脱退、ノーマン・ブレイクとレイモンド・マッギンリーの2人が半数ずつソングライティングを分け合う形で制作された。ゴーキーズ・ザイゴティック・マンキのエウロス・チャイルズがキーボードでメンバーになっている。

ティーンエイジ・ファンクラブの歴史は、不変のポップ・センスを底流にしながら、それを彩る意匠がオルタナティブなノイズからリリカルでオーソドックスなギター・ポップへと移り変わって行く、よくいえば普遍化、意地悪にいえばレイドバックの軌跡であると思っていて、その基本的な認識自体は大きく揺らがないのだが、今回のアルバムを聴いて思ったのは、その底流の方のポップ・センスがそれほど自明ではなかったということだ。

一聴すれば牧歌的でのどかなポップ・ソング、童謡のように分かりやすく歌いやすいメロディの背後に、よく聴けば、ひとつひとつの曲にとても微妙な陰影があり、メロディも一筋縄では行かず、リズムは変則的で、コーラスも複雑なハーモニーを具えていることが分かる。おそらくそれは初めからそこにあった。僕は意匠ばかり気にして、今までTFCの何を聴いてきたのだろう。これまでのアルバムをもう一度最初から聴き直そうと思った。



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