FLYING HOSPITAL
青木慶則
★★★★
Symphony Blue (2020)
SYBL-0005
■ Flying Hospital
■ In Tempo, On Time
■ 冬の大六角形
■ Hazel Eyes
■ Broken Signals
■ 秋を待たずに
■ Wonder Wonder
■ 分水嶺
■ インドアプレーン
■ 水のなかの手紙
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2018年からアーティスト名義をHARCOから本名に変更して活動している青木慶則の、変更後2枚目のアルバム。前作は全曲自身のピアノだけをバックに歌われたある意味野心的というか挑戦的というかモード・チェンジを印象づける特徴的な作品だったが、本作は通常のスタジオ・アレンジでオーソドックスなポップ・アルバムとなった。ステージではHARCO時代の作品の封印も解き、再び大らかなポップ・ソングを歌う青木にちょっと安心した。
とはいえ、もともと同じ人なので作品自体は前作においてもそれまでの活動との連続性はきちんと見て取ることができたし、そこに音楽として何かの断絶がある訳ではない。それはスタジオ・アレンジになった本作において一層顕著であり、何よりちょっと鼻にかかったような独特の甘いボーカルはHARCOであれ青木慶則であれ、そこにはっきりとした記名性を刻印したもの。スムーズなのに耳に残り聞き違えようのない声は大きな魅力の一つ。
そして達者なソングライティングはもちろん言うまでもない。技術とインスピレーションが明確な意志の下に音楽として統合されて行くプロセスは彼のすべての作品に共通のもの。美しい起伏を描く印象的なメロディと平易でありながら繊細で多義的な歌詞、レンジの広い音楽的素養がなければでき得ない多彩なアレンジ、そして上述のボーカル。奥は深いが単純なポップスとしても聴けるアルバムであり、それがこの人の自然体なんだと思う。
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