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NO HOME RECORD
Kim Gordon
★★★☆

Matador (2019)
OLE1379CDJP

■ Sketch Artist
■ Air BnB
■ Paprika Pony
■ Murdered Out
■ Don't Play It
■ Cookie Butter
■ Hungry Baby
■ Earthquake
■ Get Yr Life Back
言うまでもないとは思うがソニック・ユースのベーシストであるキム・ゴードンの、意外にも初めてのソロ・アルバム。オーソドックスなフォークとかやってたりしてとも思っていたが、聴いてみればこれこそキム・ゴードンとしか言いようのない、ノイズ、オルタナ、グランジの水脈を丁寧に跡づけるハード・エッジな内容。とはいえポエトリー・リーディングに近い実験的な曲からビートのあるロック・チューンまで、バランスは悪くない。

ソニック・ユースの音楽は確かにノイズを延々と聴かせるような、聴き手に音楽観の更新を迫るラジカルな部分も大きかったが、一方でそれを商業音楽の中に位置づけ、マス・プロダクトとして流通させることにもきちんと自覚的で、そのギリギリのせめぎ合いというか、そのアプローチが極めて知性的だった。オーソドックスなフォーマットから逸脱しながら、彼らにしかできないやり方で、それをカッコよく、心地よく、ポップに響かせた。

ノイズがポップですらあり得るというのは彼らの音楽を聴いて知ったことだし、それは彼らがそうした音楽をオーバーグラウンドに向けて発し続けた結果であった。このアルバムにあるのも、単に不愉快で退屈なだけの抽象的、実験的な何かではなく、それが誰にどうやって届くべきかきちんと考えて作られた音楽。ロックという表現が自家中毒に陥らないよう、それ自体を対象化し、異化する試みを続けてきた人の作品にしかない凄みがある。




FOREVER TURNED AROUND
Whitney
★★★★
アコースティック・ギターをメインにフィーチャーしたスタイルだが、これが単なるフォークに聞こえず、アメリカン・オルタナティブの文法を踏まえた作品に仕上がっているところが面白い。特徴的なのはジュリアン・エアリッヒのファルセットのボーカルで、これが伝統的なロックの内包するマチズモを巧みに回避しているところが現代的であり批評的。小沢健二のいう「軟弱の中の硬派の輝き」とでも言うべきか。質の高い仕上がりだ。


KIND
Stereophonics
★★☆
イノベーションとか批評性のようなものとは無関係の「ロックらしいロック」を鳴らすという点ではいかにもこのバンドらしい新作だが、今作ではエレクトリック・ギターでゴリゴリ押すハイ・ナンバーは少なく、アコースティック・ギターで歌い上げるシンプルな曲が中心になっている。その分、彼らの一番の特徴であるケリー・ジョーンズの泣きのメロディがリアルに響いて手ごたえがある。泣きが入ってるのに乾燥してるのがやはりいい。



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