ASSUME FORM
James Blake
★★★☆
Polydor (2019)
7737607
■ Assume Form
■ Mile High
■ Tell Them
■ Into The Red
■ Barefoot In The Park
■ Can't Believe The Way We Flow
■ Are You In Love?
■ Where's The Catch?
■ I'll Come Too
■ Power On
■ Don't Miss It
■ Lullaby For My Insomniac
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そういえばこの人が出てきた時にはダブステップが何だとか言われていたのだと過去の自分のレビューを読んで思い出したが、改めて調べてみてもダブステップが何なのか結局よく分からなかった。構わない。ダブステップが何であれ、ここにあるのは人間の肉声を中心的なモチーフにした音楽、つまりは「歌」に他ならないのだから。もちろん、サウンドの意匠に今日性は感じさせるものの、これがあくまで「歌」であることは間違いない。
そしてこれを一人のシンガー・ソングライターの作品として聴く時に顕著なのは、今日的な音楽の多くが「何ものでもない」ことを志向して結局最もプリミティブな何かに近似して行くアプローチを取るのに対し、ジェイムズ・ブレイクのはむしろ「何ものかであろう」とすることから始まってすべてが彼のボーカルに収束して行くことである。エレクトロニック、ダンス音楽の文脈からスタートした音楽が「歌」にたどり着くのは興味深い。
音楽というものが本質的に人間臭いのは自明だとしても、本来機能性が最重視されるはずのダンス音楽の領域で、それでもある種のロマンチシズムが必要とされるのは、つまるところダンスもまた人間の肉体というそれ自体ロマンチックな器に依拠しているからなのか。決してシャウトする訳でも、歌い上げる訳でもなく、細く震える声で歌われる「歌」が2010年代終盤のデジタル・ミュージック。アコースティック・セットで聴いてみたい。
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