青木慶則
青木慶則
★★★☆
Symphony Blue (2018)
SYBL-0001
■ 支度
■ 瞬間の積み重ね
■ 手のひらのニューヨーク
■ Time To Say Goodbye
■ どじょんこきえた
■ 花のトンネル
■ Symphony Blue
■ 働き方を考える
■ Piano, Craps, Steps #1
■ 最後のスポークスマン
■ 早春の手紙
■ 卵
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「HARCO」名義で長い間活動していた青木慶則が、アーティスト名義を本名に変更し、新たに設立したインディペンデント・レーベルから発表した第一作は、セルフ・タイトルかつ全編ピアノ弾き語りのアルバムとなった。その事実だけでも彼の新しい出発への意気込みを感じずにはいられないが、アルバムの内容もまた、青木慶則としての来るべき活動のプロトタイプとなり得る、彼の表現の広がりと奥行きを印象づける意欲的な作品である。
ピアノの弾き語りなので曲想は当然ながら青木の弾くピアノ、青木の歌声、そして青木の書く曲の3つの要素のみからできており、その分、ひとつひとつの曲の骨格とかメロディがほぼむき出しで伝わってくる。最初のうちこそ全体が単調に聞こえて、バンドが入るとどんなアレンジになるんだろうと頭の中でシミュレートしてしまうが、聴きこむうちにもはやこれらの曲には何も足さなくてもこれで完結していることが分かってくる仕掛けだ。
HARCOらしいポップなものから、ジャズのテイストを感じさせるもの、まさにピアノ・バラードというしっとりしたものまで曲調はさまざまで、ピアノ一本で曲の表情を弾き分けることを自らに課した青木のチャレンジは成功していると言っていい。決意とか覚悟を秘めたような廉潔性を感じさせるボーカルもまた、彼の音楽の決定的な要素である。とはいえ、次作はこの表現に合ったバンド・アレンジで聴きたいというのは言っちゃダメかな。
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