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LITTLE DARK AGE
MGMT
★★★

Columbia (2018)
88985476052

■ She Works Out Too Much
■ Little Dark Age
■ When You Die
■ Me And Michael
■ TSLAMP
■ James
■ Day That Got Away
■ One Thing Left To Try
■ When You're Small
■ Hand It Over
彼らの音楽を聴くと僕はいつも混乱してしまう。いや、音楽自体が僕を混乱させる訳ではない。この音楽を男性二人で作り出す、彼らは何なのか。バンドなのか、ユニットなのか。ロックなのか、ポップなのか。コマーシャルなのか、アーティスティックなのか。真剣なのか、遊びなのか。結局のところ、こいつらが「何なのか」、僕には分からないということなのだ。そして、おそらくはその両義性、多義性がこいつらのメルクマールなのだ。

この新譜は活動休止を経て5年ぶりに発表された4枚目のオリジナル・アルバム。最近は取り敢えず買う新譜は数をグッと絞っていて、たいていはSpotifyで聴いて、これはと思うものだけを買うようにしているのだが、これは最初買うつもりなかったけど、Spotifyで聴いてやっぱ買おうと思ったアルバム。とにかく『When You Die』の調子を外したギターのオブリガートがいい。この感覚は並みのバンドからはちょっと出てこないものだと思う。

一般にはサイケ・ポップとか形容されるが、このキラキラ感というか彼岸感はどこまで真面目に追求したものなのか、あるいは単に面白がっているだけなのか。おそらくは真面目に音楽表現を突き詰めた結果たどり着いた作品なのだろうと思うのだが、何かすごく戦略的にここを攻めてる感もある。それは僕の偏見かもしれないが、その真意の分からなさ、とらえどころのなさがこのバンドの特長であり、2010年代終盤におけるロックなのかも。




ISLANDS
Ash
★★★★

Infectious (2018)
INFECT423CD

■ True Story
■ Annabel
■ Buzzkill
■ Confessions In The Pool
■ All That I Have Left
■ Don't Need Your Love
■ Somersault
■ Did Your Love Burn Out?
■ Silver Suit
■ It's A Trap
■ Is It True?
■ Incoming Waves
前作から3年ぶりとなる8枚目のオリジナル・アルバム。一時は「もうCDではアルバムは出さない。曲単位の配信でリリースする」とか気負ったこともあったが、前作でシーンに復帰、コンスタントに活動しているようだ。彼らのアルバムを聴くたびにこの音楽をどう形容していいのか悩むのだが、今回もそういう作品。基本的にはパワー・ポップという言い方をされていて、実際その通りではあるけど、それだけでは説明のつかない音楽なのだ。

アート・スクール系みたいに何か気の利いたひねりとかちょっとしたインテリジェンスみたいなものが感じられる訳ではなく、ひたすらガバガバ押してはふだん忘れていたツボを刺激して声を出させてしまうアレな音楽であり、その意味ではパワー・ポップという言い方も確かに当を得ている。そしてそのやみくもな通用力や喚起力が、実際には曲そのものの質の高さ、ソングライティングの水準の高さに由来するものであること分かっている。

しかし、それでもここには論理では指摘し難い何かのマジックがある。多くのバンドがファースト・アルバムでしか表現することのできないマジックを、彼らはデビューから20年以上経ったいまも当たり前のように鳴らし続けている。彼らはおそらく成長とか進歩とかいう価値軸、評価軸に取りこまれることを意図的に忌避しているのだろうと思う。「今ここにあるロックを鳴らす」というテーゼこそが彼らには似つかわしい。聴くべき作品だ。




ALL NERVE
The Breeders
★★☆
元ピクシーズのキム・ディールのバンドが10年ぶりにリリースした新譜でプロデュースはスティブ・アルビニ。この辺の4AD風味というかオルタナの出始め期のテイストは結構好きなのだが、今となってはかなりまともなロックであり意外にポップ。オルタナの「臭み」に拘泥しないでストレートに日常性を鳴らす表現には好感が持てる。キム・ディールはゴツいおばちゃんになってるけど、それがまたロックの現在地って感じで凄みあっていい。


VIOLENCE
Editors
★★★☆
セカンド・アルバムまで聴いてあまりの暗さにしんどくなり、その後はフォローしてなかったのだが、久しぶりに聴いてみるといつの間にこんなスケールの大きな正調ロックになっていたのかと腰が抜けそうになった。生真面目で深刻なトーンも、「今ここ」に正面から挑むかのような大ぶりな曲調にはむしろマッチしており、いったいどういう経緯があったのか知らないが化けるとはこういうことか。ジャケットが気持ち悪いのだけが残念だ。


COMBAT SPORTS
The Vaccines
★★
前作のレビュー見たら「次はもう買わない」と明記していて笑った。今作もいきなり安っぽいシンセの音色で三三七拍子から始まって脱力。曲は起伏のはっきりしたパワー・ポップであり悪くはないはずだが、シーケンサーがピロピロ鳴ることで焦点がボケてしまい中途半端になった感は否めない。ポップすぎるっていうのも語弊あるけど、ちょっと調子よすぎてこのバンドって何だったんだったっけってなってしまうのが残念。次は買わない。


TRANQUILITY BASE HOTEL & CASINO
Arctic Monkeys
★★☆
正直、アークティク・モンキーズはよく分からない。本作は敢えてローテクな作りで「ロック以前」を思わせるクラシカルなプロダクションになっている。アレックス・ターナーの音楽的な素養というかルーツはたぶんこういうところにあるのだろうということは分かるが、ロック一発でザクっとシーンに噛みこんだファーストからすれば、随分遠いところまで来た感。出来はいいのだろういうことは理解するが、僕はあまり聴かないだろうな。



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