DAMAGE AND JOY
The Jesus And Mary Chain
★★★
Artificial Plastic (2017)
APR001CD
■ Amputation
■ War On Peace
■ All Things Pass
■ Always Sad
■ Song For A Secret
■ The Two Of Us
■ Los Feliz
■ Mood Rider
■ Presidici
■ Get On Home
■ Facing Up To The Facts
■ Simian Split
■ Black And Blues
■ Can't Stop The Rock
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彼らのディスコグラフィをレビューしてすっかり完結した気になっていたら唐突にリリースされた19年ぶりの新譜。店頭で見つけて「どうせまた適当なコンピレーションだろう」と手に取ったら、オリジナル新作でのけぞった。半信半疑で買って帰ったが、聴いてみてまた大爆笑。あまりに無反省で何も変わっていない典型的なジザメリ節が、これでもかと聞こえてくるのだ。彼らにとって、僕にとって、いったいこの19年間とは何だったのか。
ここにあるのは甘く切ないメロディをドスの効いたギターに乗せて淡々と歌う、古き良きUKギターポップ。しかし驚くべきなのは、シューゲイザーの始祖と言われるこのスタイルが21世紀初頭の今日にあってもまったく古びていないことだ。おそらくこの人たちには成長とか成熟とかいう考え方はないのだろう。成長しないものは永遠に古くならない。成長を止めてブリキの太鼓をたたき続ける少年のように、彼らは音楽を垂れ流し続けるのだ。
もともと聴き手を必要としない、表現の産業廃棄物みたいな音楽だからこそ、徹底して無自覚にロマンチックであり得るのだし、20年経ってもまるでネバーランドのテーマ・ミュージックみたいにイノセントでいられる。そのような彼らの音楽の本質がよく分かるとともに、そうした方法論が現代においても、いや、このグローバリズムとポピュリズムの時代にこそ有効であることを示した作品。プロデューサーのユースがいい仕事をしている。
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