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META
Metafive
★★★☆

Warner (2016)
WPCL-12294

■ Don't Move
■ Luv U Tokio
■ Maisie's Avenue
■ Albore
■ Gravetrippin'
■ Anodyne
■ Disaster Baby
■ Radio
■ W.G.S.F.
■ Split Spirit
■ Whiteout
■ Threads
高橋幸宏、小山田圭吾、砂原良徳、テイ・トウワらによる「スーパー・バンド」のファースト。一聴して思い出したのは1980年代から90年代に活動していたPINK。福岡ユタカ、ホッピー神山、岡野ハジメら、それぞれがプロデュースもできるアーティストによるバンドだったが、高機能ファンクというか、確実にポストパンクなのだが線形なロックにならず、トーキング・ヘッズの影響も感じさせるポリリズム的でポップな音楽を展開していた。

その感じからすると、圧倒的なプレイアビリティとかクリエイティビティを持った人たちが集まるとこういう感じの音楽になるというのは何となく理解というか納得できる。おそらくは高橋幸宏をコアにして、その子供たちによるオリジナル・テクノの再解釈みたいな文脈で理解すべきではないかと思うが、そういうのは置いといても、そもそもポップとしてよくできているのがこのアルバムの優れたところ。高機能だが聴き飽きないのがいい。

それはやはりメンバーがそれぞれソングライターとして確かな力量を持っているからだと思うのだが、互いをリスペクトしつつもそれぞれが自分の強みを遠慮なくこのバンドにぶつけていることも大きいと思う。基本的にはエレクトリックでファンキー、グル―ビーなポップ・ミュージックだが、きれいな色をたくさん混ぜたら結局濁って灰色になっちゃったみたいな失敗に陥ることなく、意外にかっちりしたバンド感があって噛み合った名盤。




BLUE & LONESOME
Rolling Stones
★★★☆

Promotone (2016)
571 494-2

■ Just Your Fool
■ Commit A Crime
■ Blue And Lonesome
■ All Of Your Love
■ I Gotta Go
■ Everybody Knows About My Good Thing
■ Ride'em On Down
■ Hate To See You Go
■ Hoo Doo Blues
■ Little Rain
■ Just Like I Treat You
■ I Can't Quit You Baby
ストーンズのアルバムを買うのはベストを除けば初めてだ。ディスク・レビューだ何だとエラそうなことを書いているが、これまでストーンズのオリジナル・アルバムを買ったことはなかった。別に僕ごときが今さら聴かなくても、聴くべき人は既に十分聴いているはずで、正当な評価も受けているだろう。他にも同じような感じでもはやわざわざ聴いていないメジャー・アーティストも多い。まあ、このアルバムもオリジナルではない訳だが。

これはストーンズのルーツともいうべきブルースのカバー・アルバムである。このアルバムの素晴らしいところは、「現代的な視点から再解釈」とか全然頓着していない点である。クソジジイどもがええ年して真面目に物分かりの悪いブルースをこれでもかとぶちかましてくるところにこのアルバムの意味がある。何よりこのブルース・ハープの鳴りはどうだ。この楽器をブルース・ハープと呼ぶ理由が分かる。オレらはブルースを聴いている。

ルーツに立ち戻ったといえばそうなのかもしれないが、それすらもうどうでもいい、「あのアレ、ちょっとやってみようや」「それな」くらいのノリでおそらくこれがポンと出てくるのだろう。クソジジイでいることにはそれなりのエネルギーが必要だが、いつまでたっても何にも満足しない、何か放出し続けないとたまり過ぎて暴発する天然のクソジジイどもが、発情期のネコのように、交尾の代わりに吐き出すブルースがこの上なく快感だ。




ROLL UP THE COLLECTORS
The Collectors
★★★★☆

Triad (2016)
COZP-1266

■ 悪の天使と正義の悪魔
■ ロマンチック・プラネット
■ That's Great Future 〜近未来の景色〜
■ 希望の舟
■ 東京ダンジョン
■ 恋はテトリアシトリス
■ ノビシロマックス
■ バニシング
■ 舌を結んで
■ Kevin
3月に30周年の武道館公演を控えたオレらのザ・コレクターズが満を持して発表したオリジナル・アルバム。このところ毎年1枚の勢いでガンガン新作をドロップしてくるのは充実か開き直りか。しかし実際に作品を聴いてみればそれがただの粗製乱造でないことは明らかだ。加藤ひさしの泣きの効いたソング・ライティング、古市コータローが自在に操るリッケンバッカーの鳴り、最近の作品の中でもすごくストレートに耳に入ってきて驚いた。

曲のサイズが最長でも5分30秒、10曲通して聴いても46分というコンパクトさは大きい。ひとつひとつの曲のキャラクターがはっきりしている上に、むやみに大仰だったり冗長だったりする曲がなく、深く耽溺しているのに気がつくとあっという間に聴き終えている。時間の流れを自在に引き延ばしたり縮めたりするのは優れたポップ音楽特有のマジック。一時は鼻についた加藤のバカバカしい歌詞も前作あたりから自然に聴けるようになった。

何か難しいことを難しく伝えようとしていた時期もあったと思うが、バカバカしいことを身もフタもなく、ただそれだけのバカバカしさだけをガツンとぶちかまして、後は好きにしろと突き放す割りきりというか、役割期待の整理というか、所詮これだろ、結局これだろという直接性こそがコレクターズだったと再認識するアルバム。50代の『ノビシロマックス』を聴いて「これでええんや」と涙した。今こそザ・コレクターズを、我らの手に。



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