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PALE みずいろの時代
山田稔明
★★★★

GOMES THE HITMAN.COM (2016)
GTHC-0008

■ pale blue
■ 気分
■ ナイトライフ
■ モノクローム
■ セレナーデ
■ スミス
■ 幸せの風が吹くさ
■ my valentine
■ calendar song
■ Qui La Laの夏物語
「緑の時代」と同様、1993年から20年間に書かれた「青春の軌跡」と呼ぶべき一群の曲を、今の山田が現代に位置づけるべくファイナライズしたアルバムである。だが、「緑の時代」が引出しの奥から「そういえばこんなのもあった」的に引っ張りだした古いキーホルダーや缶バッヂに息を吹きかけてほこりを払うようなアルバムだったのに比べ、ここでは曲の粒立ちを揃える作業がより丁寧になされ、アルバムとしての完成度、一体感は高い。

最も古い『スミス』は「初めて自分で歌うために書いた」英詞の曲。最も新しい『calendar song』は2016年1月のライブで披露されたポップ・チューン。しかしそのいずれもが現代の山田の表現としてきちんとアップデートされており、時間という縦の連なりが、ひとつのアルバムとしての空間に再構成されて、広がりと奥行きのある立体的な作品に仕上がった。オリジナル・アルバムとして正面から対峙するに足る表現の強度を備えた作品だ。

それでも、山田がここ3年、こうした企画盤2枚と愛猫の追悼盤となるミニ・アルバムをリリースしながら足場を固める作業をし続けてきたことは、2013年の「新しい青の時代」がいかに山田の中で大きな存在であるかを想像させる。次へ進む前に、山田は表現に向かう自分の中のコアのようなものを棚卸する必要があったのかもしれない。ポップであることがもはや何かの救いと同義であり得る世界で、人生は続く、そう、カレンダーのように。




醒めない
スピッツ
★★★☆

Universal (2016)
UPCH-2086

■ 醒めない
■ みなと
■ 子グマ!子グマ!
■ コメット
■ ナサケモノ
■ グリーン
■ SJ
■ ハチの針
■ モニャモニャ
■ ガラクタ
■ ヒビスクス
■ ブチ
■ 雪風
■ こんにちは
前作から3年ぶり、オリジナルとしては15枚めになるアルバム。例によってタイアップのついたシングル曲をリードにしながら、クオリティの高いポップ・ソングをこれでもかと詰めこんだ王道のストロング・スタイルだが、僕がこのところのスピッツに惹かれるのは、分かりやすい曲調の中に忍ばされたハッとするような残像の一瞬の顕現とか、あるいは小さな裂け目から思いがけない深遠が一瞬見えてしまう宿命的な歪みとかいったものだ。

おそらくはアルバム「ハヤブサ」以降、亀田誠治のプロデュースを得て新しいフェイズに入った彼らにとって、ポップなものをポップに歌うことはもはやテーマでも何でもない当然の前提になっており、その上でどれだけギリギリの直接性をそこに乗っけることができるかということなのだと思う。既にもうささくれを丁寧に面取りする作業は放棄され、アクはアクでそのままポンと提示され、それをも包含した強引なポップに回収されている。

顕著なのは例えば『子グマ!子グマ!』。曲調としてはかなり手クセのはっきりしたギター・ロックだが、ブリッジでいきなりブギー調のシャッフルになるところ、そしてそこで歌われる「子グマ!子グマ!荒野の子グマ」というフレーズの喚起力。あるいは『ナサケモノ』の「シベリア猫 ハワイの猫 同じ星見てた」という歌詞の射程距離。『モニャモニャ』の泣ける感じとかも。みんなが大好きなものを好きになれなくても全然可哀想じゃない。



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