微妙なアーティスト名義のアルバム。ELOのアルバムは5枚2,500円の旧譜廉価盤しか持っておらず、事実上初めて買うアルバムだが、ELOと聞いて多くの人が想起するような、ストリングスを大々的にフィーチャーしたスペース・ロックとは異なり、ここで聴けるのはビートルズ(どちらかといえばポール・マッカートニー)直系のスイートなメロディであり、ジョージ・ハリスンを思わせるスライド・ギターの効いたカントリー・ロックである。
音楽的な手ざわりとしては、1980年代後半に話題になったトラベリング・ウィルベリーズやジェフ・リンがプロデュースしたジョージ・ハリスンのアルバムに近い。ジェフ・リンがなぜこのアルバムをソロ名義のアルバムにしなかったのか、あるいは逆に「エレクトリック・ライト・オーケストラ」を堂々と名乗ることもしなかったのか、ジャケットに「例のUFO」まで登場させた割りに、その名が体を表さない的な煮えきらなさがもどかしい。
まあ、その辺は何かと大人の事情があるのかもしれないが、そうした「ELOにまつわるあれこれ」を捨象し、これをジェフ・リンのソロ・アルバムとして聴けば、当然とはいえプロの作品という他ないよくできた楽曲揃いの実に堂々とした王道のポップ・アルバムであり、ビートルズの正統な継承者と言われる所以がよく分かる。この人自身も既にレジェンドの域に達していると思うが、それだけに中途半端なELO頼み感がもったいなく感じる。
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