前作から4年ぶり、8枚目のオリジナル・アルバムである。僕が初めて彼らのアルバムを聴いたのは3枚目(緑色のヤツ)だったが、20世紀も終わろうとしている頃(1998年)にこの人たちは何をやっているのだろうと思ったものだ。何度も書いているが、そこにあったのは生きられたはずの、しかし実際には存在しなかった架空の過去のような、1980年代へのレクイエムであり、本当であれば10年以上前に鳴らされるべきだった音楽だったのだ。
本作はベルセバが大胆にダンス・フロアに進出した大転換作だという世上の評価は承知しているが、ベルセバを聴き続けてきた身としては、この作品のいったいどこに「転換」があるのかと当惑しない訳に行かない。確かにペット・ショップ・ボーイズを思わせるようなエレクトリック・ポップの意匠を借りた曲もあるが、彼らの音楽がひそやかで張りつめたフォークだけでないことは随分前から分かっていたこと。今作での挑戦もごく自然だ。
それよりも聴かなければならないのはスチュアート・マードックの、おそらくは一生かけても拭い去ることのできないルサンチマンであり、すべてを冷笑し唾棄し混ぜっ返す悪意であり、その意味でのパンク的態度である。ベルセバの本質はシニシズムであり、本作もまたこれまでの彼らのアルバム同様、世界への懐疑と、それ故愛情に満ちたアンビバレントな視線の物語。何も変わっていないが、むやみに曲が長いのだけは何とかして欲しい。
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