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GIRLS IN PEACETIME WANT TO DANCE Belle And Sebastian 7松

前作から4年ぶり、8枚目のオリジナル・アルバムである。僕が初めて彼らのアルバムを聴いたのは3枚目(緑色のヤツ)だったが、20世紀も終わろうとしている頃(1998年)にこの人たちは何をやっているのだろうと思ったものだ。何度も書いているが、そこにあったのは生きられたはずの、しかし実際には存在しなかった架空の過去のような、1980年代へのレクイエムであり、本当であれば10年以上前に鳴らされるべきだった音楽だったのだ。

本作はベルセバが大胆にダンス・フロアに進出した大転換作だという世上の評価は承知しているが、ベルセバを聴き続けてきた身としては、この作品のいったいどこに「転換」があるのかと当惑しない訳に行かない。確かにペット・ショップ・ボーイズを思わせるようなエレクトリック・ポップの意匠を借りた曲もあるが、彼らの音楽がひそやかで張りつめたフォークだけでないことは随分前から分かっていたこと。今作での挑戦もごく自然だ。

それよりも聴かなければならないのはスチュアート・マードックの、おそらくは一生かけても拭い去ることのできないルサンチマンであり、すべてを冷笑し唾棄し混ぜっ返す悪意であり、その意味でのパンク的態度である。ベルセバの本質はシニシズムであり、本作もまたこれまでの彼らのアルバム同様、世界への懐疑と、それ故愛情に満ちたアンビバレントな視線の物語。何も変わっていないが、むやみに曲が長いのだけは何とかして欲しい。

 
MODERN NATURE The Charlatans 7竹

5年ぶり12枚目のオリジナル・アルバム。2013年にオリジナル・メンバーのドラマー、ジョン・ブルックスを脳腫瘍で失い、ドラムにはゲスト・ミュージシャンを迎えての制作となった。シャーラタンズは1996年にも当時のキーボーディスト、ロブ・コリンズを交通事故で失っている。デビュー25年の長いキャリアなのでいろんなことがあるのは当然ではあるが、一度ならず二度までもメンバーの死に見舞われるとはつくづく不幸なバンドだ。

デビュー当初は折からのマンチェスター・ブームの旗手としてもてはやされ、そのため逆にハイプで終わると思った人も多かったと思うが、作品を重ねるごとに黒く、重心が低いロックとしての一般性を獲得して行った。このアルバムでもオルガンの鳴りをアクセントにしたグルーヴィでダンサブルなロックを遠慮会釈なく叩き出してくる。マンチェスターがロックにおける身体性というテーマの一局面だとすれば、彼らの成長は実に正統だ。

ただ、これは本作に限ったことではないのかもしれないが、曲調に独特の影があり、突き抜けるようなジャンプ・ナンバーの開放感といったものは期待できない。むしろ人混みのホールで黙々と「自分のためのダンス」を踊り続けるために、勢いよく飛び出すよりは、ダラダラと湧き出るようなグルーヴ。この暗さにこそ習慣性、中毒性がある訳だが、これを無条件に受け入れられるかが好みの別れるところ。噛みしめるように聴きたい作品。

 



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