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SONGS OF INNOCENCE U2 7竹

タワレコでCDを買って帰ってiTunesでリッピングしたらなぜか既にこのアルバムがiTunesに入っていてダブってしまった。そういえば「何かU2っていう知らないバンドの曲が勝手にiTunesに入ってるんですけど」的な話が若い子の間で出てるっていうのを聞いていたがこれがそれか。CD買うんじゃなかった。このリリース形態については賛否があるらしいが、頼んでもないのに勝手にiTunesに入りこんで居座ってるあたりがいかにもU2って感じ。

内容的にはオーソドックスなモダン・ロックである。プロデューサーにはベックやゴリラズを手がけたデンジャー・マウスを起用、国境を越えた情報資本主義があらゆるものを大量に流通させ消費して行く速度に拮抗できるだけの楽曲としての強靭さ、注意深くかつ大胆に構築されたグルーヴ、そして一度聴いただけで間違いなくそれと判別できる特徴的なジ・エッジのギターとボノのボーカル。グローバリズム時代をサヴァイヴするロックだ。

何より素晴らしいのはこのアルバムの暑苦しさであり押しつけがましさ。ウザがられても頓着せず勝手に他人のiTunesに入りこんで居座るその過剰な確信こそがU2の本質である。この圧倒的なシリアスさ、この一方的な正しさへの自信。産業ロックという言葉があるが、ここにあるのはそんな揶揄とは別次元の、それ自体が産業であるような、インフラストラクチャーとしてのロックと言っていい。すべてのiPhoneに遍在する現代のアイコン。

 
HENDRA Ben Watt 7松

エブリシング・バット・ザ・ガールのベン・ワットのソロ・アルバムである。前作はトレイシー・ソーンとEBTGを結成する前の1983年にリリースされた『North Marine Drive』で、ネオアコの名作と呼ばれた作品。その後、EBTGとして商業的な成功を経て、31年ぶりに制作したというセカンド・ソロ。プロデュースはトレイシー・ソーンのソロも手がけたエヴァン・ピアスン。ギタリストにスウェードのバーナード・バトラーが参加している。

EBTGは初期のアコースティックからエレクトリックなダンス・ミュージックに大胆に路線を転換してブレイクした訳だが、ギリギリまで張りつめた音楽としての完成度を追求するストイックな態度や緻密な曲作りという方法論においては何も変わっていなかったと僕は思う。今作は31年前のソロ前作やEBTGの初期を思わせるアコースティックで率直な音作りだが、音楽に対する誠実さ、几帳面さがすべての基調にあるのはここでも疑いがない。

特筆するべきはバーナード・バトラーのギターだ。ややもすれば静謐で耽美的な、スタティックで内省的な世界に沈潜しそうになるベン・ワットの音楽に、グッとワイルドな動因を与え、車輪を回す原動力になっているのがこのギターであるのは間違いない。端整で丁寧なベン・ワットの曲のよさを生かしながらも、それを開かれたポップネスの地平にきちんと接地させていて、この組み合わせの親和性は高い。コンビ活動の継続を希望する。

 



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