1980年代にイギリスで活躍したバンド、エコー&ザ・バニーメンの12枚目のオリジナル・アルバムらしい。大方の人にとってエコバニはイアン・マッカロクが(いったん)脱退するまでの5枚のアルバム、いや、セルフ・タイトルの5枚目を除く初期の4枚のアルバムで語られるべき存在だ。結局、彼らがロック史において記憶されるのはそれらの作品によってであり、極北の硬質なギター・サウンドを鳴らすネオ・サイケの旗手としてである。
だが、ディスコグラフィを見れば、その後、イアン・マッカロクの脱退、バンドの解散、ピート・デ・フレイタスの死、マッカロクの復帰による再結成、レス・パティンソンの脱退という紆余曲折を経ながらアルバムを発表し続け、実はその後に発表されたアルバムの方が多い。彼らは、いや、イアン・マッカロクは、若い時期に突出した業績を残しながら、その後は過去の貯金を食いつぶしながら、果てしない後退戦を戦ってきたのである。
ここで鳴らされている音楽は間違いなくエコバニのものである。生硬なメロディが歪みのないギターの音に乗って彼岸から聞こえてくるような無常感は彼ら以外の誰にも表現のできないもの。キリング・ジョークのユースのプロデュースによってよりエッジの立った音楽に仕上がっている。しかし、かつて彼らの音楽の本質であった潔癖さのようなものは当然だがもはや見当たらない。今の彼らに何を求めるべきか、むしろ自分に問うべき作品。
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