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WHAT HAVE WE BECOME Paul Heaton & Jacqui Abbott 7松

ハウスマーティンズ、ビューティフル・サウスのポール・ヒートンが制作した、ビューティフル・サウスで女声ボーカルを担当していたジャクリーヌ・アボットとのデュエット・アルバム。そういう顔合わせなので「要はビューティフル・サウスなんでしょ」と思って買うのを見合わせていたが、他に買うCDもなかったので注文した作品。結論から言えばビューティフル・サウスとは違ったダイナミックな音楽を聴かせるいいアルバムである。

ビューティフル・サウスは本国イギリスでは非常に高い人気を誇ると言われ、僕の好きなハウスマーティンズのポール・ヒートンのバンドということもあってずっと新作が出るたびに聴いていたが。しかしあれはどうもイギリスでは歌謡曲枠で支持されているのではないかと思う。曲はよくできているのだが、音楽そのものが予定調和的な額縁みたいなものに収まり過ぎてて、一線を越えて踏み込んでくるモメントがない。安全な音楽なのだ。

だが、本作はハウスマーティンズ時代のプロデューサーであるジョン・オーウェン・ウィリアムズをプロデューサーに起用したこともあってか、サウンド面でビューティフル・サウスの頃には見られなかったロック寄りのアプローチが見られ、ハウスマーティンズに顕著だった前がかりな性急さが表現されている。こうしたメリハリの中でこそ、オーソドックスでスタンダードなヒートン節も訴求力を持ち得る。意外によくて驚いた作品だった。

 
METEORITES Echo & The Bunnymen 6竹

1980年代にイギリスで活躍したバンド、エコー&ザ・バニーメンの12枚目のオリジナル・アルバムらしい。大方の人にとってエコバニはイアン・マッカロクが(いったん)脱退するまでの5枚のアルバム、いや、セルフ・タイトルの5枚目を除く初期の4枚のアルバムで語られるべき存在だ。結局、彼らがロック史において記憶されるのはそれらの作品によってであり、極北の硬質なギター・サウンドを鳴らすネオ・サイケの旗手としてである。

だが、ディスコグラフィを見れば、その後、イアン・マッカロクの脱退、バンドの解散、ピート・デ・フレイタスの死、マッカロクの復帰による再結成、レス・パティンソンの脱退という紆余曲折を経ながらアルバムを発表し続け、実はその後に発表されたアルバムの方が多い。彼らは、いや、イアン・マッカロクは、若い時期に突出した業績を残しながら、その後は過去の貯金を食いつぶしながら、果てしない後退戦を戦ってきたのである。

ここで鳴らされている音楽は間違いなくエコバニのものである。生硬なメロディが歪みのないギターの音に乗って彼岸から聞こえてくるような無常感は彼ら以外の誰にも表現のできないもの。キリング・ジョークのユースのプロデュースによってよりエッジの立った音楽に仕上がっている。しかし、かつて彼らの音楽の本質であった潔癖さのようなものは当然だがもはや見当たらない。今の彼らに何を求めるべきか、むしろ自分に問うべき作品。

 
鳴り止まないラブソング The Collectors 7竹

コレクターズの新譜が出る度に「かつては好きだったんだよな」的な煮え切らないレビューを書くという失礼な所業を繰り返し、ついに前作「99匹目のサル」はレビューすらしなかった。今作も最初はなかなか自分の中にうまく取りこむことができず、こりゃまた何回か聴いたらラックにしまいこんで終わりかと正直考えていた。だが、レコーディング・セッションの様子を収めた付属のDVDを見て、このアルバムの受け止め方が少し変わった。

正直、ここ最近のコレクターズは加藤ひさしのあまりにベタな歌詞に食傷して、なかなか素直に音楽を聴けなかったところがあったのだが、DVDを見ると、歌詞が乗る前の音作りのプロセスが垣間見えて、コレクターズの本質がガツンと音の出るようなしっかりしたギターにあるのだということを再認識できた。そうしてCDを聴くと、ギターのリフがきちんと聞こえてきて、歌詞がそこにきちんとはまって行く流れも逆にしっかり腑に落ちた。

ギター・ロック、ビート・ポップスとしての本質に立ち戻ったかのような本作では、キーボードなどによる「装飾」は極力はぎとられ、ドラム、ベース、ギターというバンドの構成要素がどのようにして音を組み立てているのかがよく分かるスケルトンのような音作り。ベースの小里誠が脱退して音作りには苦労もあったと思うが、それがバンドの持ち得る音楽的引き出しの棚卸につながったのか。コレクターズの聴き方が分かった気がする。

 
FOSSIL FUEL THE XTC SINGLES 1977-92 XTC
UNPLUGGED 1991 & 2001 THE COMPLETE SESSIONS R.E.M.
 



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