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MORNING PHASE Beck 8梅

これまでもベックさんの作品のレビューでは何度か書いてきたと思うが、僕にとってベックさんは常に「正しい」存在である。その正しさの本質が何なのかとか、それを抑圧的に機能させずポップ・ソングとして開放するためのメカニズムとかについてもこれまで書いてきたのでその気のある人は過去のレビューを探してみて欲しい。僕にとって同じカテゴリーに属するのはトム・ヨークとかデーモン・アルバーンとかと言えば分かるだろうか。

そういう意味では今作もまた「正しい」。なぜならそれは誤りを初めから生み出さない音楽だからなのだが、それはつまりあらゆる種類の誤りもまた初めからベックさんの音楽に内包されているというのと同義。要はベックさんの音楽はすべての音楽がいったん鳴りやんだ地平から「よっこらしょ」ともう一度鳴り始めたものだということで、そこでは正しいか誤りかという問い自体が答えになっているということ。ベックさんは超越的なのだ。

今作は一聴すれば穏やかで内省的な歌モノで、どこか懐かしい印象さえ受けるような、あらゆる清濁を合わせ飲むことからスタートするベックさんにしてはむしろオーソドックスすぎる作品に聞こえるが、ではこれが過去の時点のいずれかに実在したかと言えば答えは断じてノーだ。佐村河内守が図らずも「優れた音楽作品と作家性とは何か」という問題を提起してしまったのだとすれば、そのひとつの答えは間違いなくこの作品の中心にある。

 
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