これはベタな音楽である。ふだん難しい顔をしてレディオヘッドとかベックとかを聴きながら分かったような分からないようなカッコつけたレビューを書いてても、ほんまはこういうんが好きなんやろ、オラオラ、身体は正直やのう、こんななっとるやないか、ひひひ、という音楽なのだ。そしてそれがまた実際いいのである。悔しいけど身体が反応しちゃうんである。プライドさえかなぐり捨てればあとはもう快楽に身を任せるだけなのだ。
音楽的には正統的なオールド・スクールのR&Bをベースにしたタメのあるロックであり、例えばレニー・クラヴィッツやテレンス・トレント・ダービーなんかにも近いものがある。だが、ここにあるのはそれらよりももうちょっと恥ずかしげのないそのまんまのR&Bでありスタックス・ソウル。悪く言ってしまえばこれはもうロックというよりある意味演歌の世界である。北島三郎に歌ってもらっても違和感のない本格的な腰の入り具合なのだ。
21世紀の現代において、これを認めるかどうか本当なら議論があってしかるべきなのかもしれない。何しろこれはレトロであり、保守反動なのだから。進歩主義者からすれば時計の針を逆に回すような音楽は、いかにトロトロにスウィートでも唾棄すべきものだからだ。だが幸運なことに僕は進歩主義者ではない。音楽の持つ原始的な力を最も効率のいい方法で解放しようとしたらこうなったという事実は謙虚に認めるべきだ。面白い作品だ。
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