logo 2011年11・12月の買い物


BON IVER Bon Iver 7松

毎年音楽雑誌の年間ベスト・アルバムみたいな企画を見て、高い評価を受けているアルバムを後追いで何枚か買うのだが、2011年に関してはこれ1枚だけだった。各誌が共通して推す「これだ」という最大公約数的なベスト・アルバムがあまり見当たらない中で、唯一どの雑誌でもほめられていたアルバムを聴いてなかったというのも皮肉な話だが、年間を通じてそれほど大きな話題になった訳でもなさそうなこのアルバムのポイントは何か。

ボン・アイヴァーというのはジャスティン・ヴァーノンのソロ・プロジェクトのようだが、2008年に発表したデビュー・アルバムが高い評価を受け、ネオ・フォーク的な潮流の中で実力派として期待されていた人らしい。デビュー・アルバムはアコースティック・ギターだけで作った静謐な作品だったらしいが、ここではシンセサイザーを多用し夢の国に遊ぶような幻想的な音響の世界が広がっている。ゴージャスとすら言えるかもしれない。

しかし、使う音の数が多くなっても、そこに描かれているのは密やかな世界の静けさである。それは音が大きくなればなるほど際立って行く、想念としての静けさだ。うるさい蝉の声が岩に沁みいるように、音のそのただ中で忘我の境地になるような張りつめた一粒の音にこめられた心象風景である。メイン・ストリームでトップに登りつめるような音楽ではないかもしれないが、各誌がこぞって高い評価をする何かがここにあるのは確かだ。
 

 
JPN Perfume 7竹

彼女らの前作をレビューしたときに彼女らのことを「三次元のナマ身を持つ初音ミク」「合成音声をシミュレートする肉声」「あらかじめ剥奪された実存性の残滓としての肉体」と評したのは僕としても会心の出来のレビューのひとつ。いまだにオレは何ていいことを書いたんだと読むたびに感心する。これを看破したのは僕が最初じゃないのか。あるいはそうした考え方は彼女らの周辺ではもう当然のことで目新しくも何ともないのだろうか。

例えば機械の身体を手に入れるために銀河鉄道に乗り込んだ星野鉄郎のように、あるいは自動車との交合を夢見たバラードのように、少女の柔らかい肉体や舌足らずな肉声が機械的なビートと交わり、あまつさえヴォコーダで歪められて管理される倒錯は優れて現代的なもの。成熟することを拒否した機械の永遠の生が少女アイドルと親和性を持つのは、考えてみれば当たり前のことなのかもしれない。これは母性と対極にある女性音楽なのだ。

それが最も先鋭的に突出していたのは前作の『edge』であり、ライブ・ビデオで見たパフォーマンスはひとつの頂点ではないかと思ったが、それに比べると今作は肝心の曲自体にやや単調さが見られるようにも思える。もうこのスタイルからはこれ以上のものは出てこないのかもしれないが、サウンドが硬質であればあるほど叙情的であるべきメロディまでが、小室直系の生硬で不自然なものに聞こえる曲があるのは気になる。ネタ切れ近しか。
 

 
PART LIES PART HEART PART TRUTH PART GARBAGE R.E.M.  
MURMUR R.E.M.  
GREEN R.E.M.  
A CHRISTMAS GIFT FOR YOU FROM PHIL SPECTOR V.A.  
 



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