レーベルとの契約が切れ、インディーに戻って前作から1年と短いインターバルでリリースした通算6枚目のアルバム。トラヴィスといえば出世作となったセカンド「The Man Who」以降、凍てついたように森閑とした世界の向こう側から聞こえてくる端整なアコースティック・ロックを武器にビッグ・ネームとして確固たる地歩を築いた訳だが、最近は勢いも少し衰え、前作ではその緻密な音楽が自家中毒を起こし、高度に構築された世界に自ら閉じこもって行くような果てしない抑圧感が気になった。
それが今作ではどうだろう。僕たちがよく知っているトラヴィスの美しいメロディは確かに随所に顔を覗かせるものの、全体としては驚くほど素直で明快なギター・ロックに仕上がっている。考えてみればデビュー作ではスティーブ・リリーホワイトのプロデュースで元気いっぱいのロックンロールを鳴らしていた訳で、それがいきなりナイジェル・ゴドリッチの手にかかって「雨はなぜいつも僕の上に降るのか」になってしまったことが不自然だったのかもしれないが、それがバカ売れしてしまったのだ。
レーベルを離れた途端に、こういうアルバムを短い製作期間で打ち出してきたということは、やはり彼らが本当に作りたかったのはこういうギター・ロックだったということであり、この作品は本来であればあのセカンドの次に作られるべきアルバムだったのではないだろうか。セカンド以降のトラヴィスのパブリック・イメージをあっさり裏切り、こういう肩の力の抜けた等身大のアルバムを発表したのは好感が持てる。ただ、このやり方でセカンド、サードのクオリティを越えて行くのは並大抵ではない。
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