ロックであること。ロックであり続けること。いや、21世紀の今日にあってはもうロックという言葉自体が死語に近づいており、若者はだれももはやロックであるとはどういうことかなんて悩み方はしないのだろう。音楽はネットからダウンロードして携帯で聴くものであり、それがロックかロックでないかなんて取り敢えず自分とは何の関係もない戯言に過ぎないのだろう。構わない。それはたぶん21世紀の今日にあっては最も健全な音楽との向き合い方だ。なぜロックでなければならないのか。そんな理由はどこにもないのだ。
だが、残念なことに(そしてまた幸いなことに)僕は若者ではない。僕にとってある音楽がロックかどうかということは決定的に大きな意味を持っている。というか、ある音楽がロックかどうか、それを考えるのが僕の趣味だと言ってもいいだろう。そしてそれは、じゃあロックって何なのか、を考えるのと同義だ。僕が毎度だれに頼まれた訳でもない新譜レビューを懲りもせず書き続けているのも、それを見極めるための試みに他ならない。おそらくは死ぬまで答えなんか出ないであろうその問いを考え続ける営みに他ならない。
これを読んでいる君が若者なのかオヤジなのか、そのどちらでもないのか僕は知らない。その君に僕は訊きたい。このR.E.M.の新譜は君にとってロックなのかと。このアルバムで彼らが奪還した直接性を僕たちは何と呼べばいいのかと。僕にとって紛れもなくこれはロックだ。ロックって何なのか、それを言葉で説明することは難しい。それができればこんなレビューなんて書いてない。だけど確かなことは、このアルバムは疑いもなくロックだということだ。表面に張りつめていたビニルの薄膜を一気に引き剥がしたような快作。
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