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ACCELERATE R.E.M. 8竹

ロックであること。ロックであり続けること。いや、21世紀の今日にあってはもうロックという言葉自体が死語に近づいており、若者はだれももはやロックであるとはどういうことかなんて悩み方はしないのだろう。音楽はネットからダウンロードして携帯で聴くものであり、それがロックかロックでないかなんて取り敢えず自分とは何の関係もない戯言に過ぎないのだろう。構わない。それはたぶん21世紀の今日にあっては最も健全な音楽との向き合い方だ。なぜロックでなければならないのか。そんな理由はどこにもないのだ。

だが、残念なことに(そしてまた幸いなことに)僕は若者ではない。僕にとってある音楽がロックかどうかということは決定的に大きな意味を持っている。というか、ある音楽がロックかどうか、それを考えるのが僕の趣味だと言ってもいいだろう。そしてそれは、じゃあロックって何なのか、を考えるのと同義だ。僕が毎度だれに頼まれた訳でもない新譜レビューを懲りもせず書き続けているのも、それを見極めるための試みに他ならない。おそらくは死ぬまで答えなんか出ないであろうその問いを考え続ける営みに他ならない。

これを読んでいる君が若者なのかオヤジなのか、そのどちらでもないのか僕は知らない。その君に僕は訊きたい。このR.E.M.の新譜は君にとってロックなのかと。このアルバムで彼らが奪還した直接性を僕たちは何と呼べばいいのかと。僕にとって紛れもなくこれはロックだ。ロックって何なのか、それを言葉で説明することは難しい。それができればこんなレビューなんて書いてない。だけど確かなことは、このアルバムは疑いもなくロックだということだ。表面に張りつめていたビニルの薄膜を一気に引き剥がしたような快作。
 

 
DIAMOND HOO HA Supergrass 7梅

考えてみれば彼らがデビューしたのは1995年のことであり、その時には「レニー」という鮮烈なシングル・ヒットもあったのだが、それってもう10年以上前になってしまい、今、リアルタイムで洋楽を聴いている人たちの中にはそれを知らない人もきっといるのだろう。結局僕たちはある一時期に刷り込まれた音楽に宿命的に囚われてしまい、その記憶とか残像みたいなものをずっと追い続けることになるのかもしれない。そうでもなければだれが今どきスーパーグラスの新譜を、何も知らずにふと手に取るというのだろうか。

そう、メディアへの露出も減り、新しく手に取ってもらうには難しい状況になりつつある「すごい葉っぱ」の諸君だが、それにはもったいないまともなロックを作り続けていることは毎回僕がレビューで力説している通りである。このアルバムでも、ドラム、ベース、ギターというロックンロールの基本的なギアを生真面目に取り回しながら、今そこにある生の瞬間を何とか音楽として定着させようとする地道な試みがなされている。いささか地味で華に欠ける部分はあるものの、好感の持てる正攻法のロックンロールである。

特に本作では、敢えてそうしたのかと思うくらいサウンドも節回しもヘヴィでストロング。ブルースやグラムの影響が強いとも指摘されている。何回か聴くうちに耳に馴染んでは来るが、一聴しただけではとっつきにくく感じられるかもしれない。彼らを既に知っている人に買ってもらい、手堅い評価を受けるためには好適な作品ではあるが、1995年にはまだ赤ちゃんだった中学生を敢えて立ち止まらせ、振り返らせるには少し間口が狭いのではないか。間違いなく実力があるだけにこの出来のよさが逆に心配になってしまう。
 

 



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