ティム・バートン監督の「チャーリーとチョコレート工場」をテレビで見た。原作は10年ほど前に読んだことがあるのだが、ティム・バートンが映画化したときに劇場へ見に行くのをサボっていて、今回テレビで見たらやっぱりこれは行っておくべきだったと後悔した。原作のあのハッピーなのかブラックなのか、教育的なのか背徳的なのかよく分からないような不気味な感じを主演のジョニー・デップが絶妙の間合いで演じきっていて、ダニー・エルフマンの音楽ともども完璧なファンタジー・コメディに仕上がっていたからだ。
カルトでマニアックでありながら子供も一緒になって笑いながら見られる、あるいは逆に言えば子供向けファンタジーの顔をしながらその裏に屈折した笑いと毒気を隠し持っている、この映画の明快さと多義性は、間違いなくザ・コレクターズの音楽に通じるものだ。そしてこのアルバム「東京虫BUGS」では彼らのそういう二面性がかなりストレートに立ち現れている。もちろん彼らの二面性とは、ポップで分かりやすいメロディ、キャッチーなアレンジと、その背後にあるスタイルへの偏愛、異形のルサンチマンに他ならないが。
ここしばらくのコレクターズのアルバムでは生真面目でパワー優先のプロデュースが結局そういう彼ら独特のケレンを殺してしまっていたように思う。それが前作あたりから再び遠慮なく前面に立つようになってきた。ジャケのリリー・フランキーのイラストにも窺えるように何かひとつ吹っ切れたのではないかとさえ思わせる。願わくばひとつはうなってしまうようなキラー・チューンが欲しかったような気もするがそれは贅沢か。それにしてもあの映画のジョニー・デップの扮装、どう見ても加藤ひさしだったよなあ、絶対。
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